研究課題/領域番号 |
24710147
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
吉田 昭二 筑波大学, 数理物質系, 助教 (90447227)
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キーワード | 分子エレクトロニクス |
研究概要 |
これまでのSTMを用いた実験研究からSiを電極として作成したジエチニルベンゼン単一分子接合において、電極間距離に依存して接合のコンダクタンスが変化し、ある電極間距離において不連続にスイッチングする現象が観測された。そのメカニズムを解明するために、昨年度、電子輸送計算ソフト「Quantumwise」及びガウシアンを使用し理論的な検討を行った結果、観測された単一分子コンダクタンスの変化は分子のシス-トランス異性化に由来することが示唆された。 今年度は、得られた理論予測を再度実験により検証するため、原子間力顕微鏡(AFM)とSTMを組み合わせた複合装置を用いた実験に取り掛かった。これまでのSTMを用いた測定の場合、単一分子接合はSi製STM探針とSi(100)基板の間に形成されていたが、今回は探針をSi製AFMカンチレバーに変えることによって、探針-試料間に流れる電流値に加えて、単一分子に印加される力(フォースカーブ測定)と分子長変化を同時に測定することが可能となる。この3つの測定量を同時に測定しそれぞれの対応関係を調べるできれば分子の微細な構造変化とコンダクタンス変化の対応を実験的に観察することが可能と考えられる。そのための新しい計測ソフトと、カンチレバー探針先端のSi酸化膜を除去し探針先端表面を清浄化するシステムも作成し実験を進める準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の業績を国際誌の論文として出版するにあたって、実験による追試を行う必要が生じたため当初の実験計画の優先順位を一部変更した。当初昨年度に予定していた研究の一部に遅れを生じたが、そのための準備は完成し、本年度は速やかに実験を進めることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
単一分子スイッチングの動的メカニズムの解明のために、昨年度完成したシステムを用いて単一分子のフォースカーブとコンダクタンスの同時測定に加え、本年度はさらに、精密な分子形状の制御を行うための装置開発を行う。これまでは片側の電極位置を接合の伸縮方向(Z方向)に変化させて、分子形状を変化させていたが、さらに横方向(XY方向)にも動かしながらコンダクタンスを計測することによって分子形状を自由に操作可能なシステムを構築し、単一分子伝導の精密計測を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額の23742円は前年度3月中に執行した分が前年度の内に計上されなかったために生じた金額差である 残額はすでに執行済みであり当初の予定に計画の変更はない
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