研究課題
単一分子を電極に挟んで形成される単一分子接合の伝導特性は分子の形状に強く依存することから、光や電場、外力によって分子の形状を自在に操作することができれば、単一分子素子の伝導特性制御が可能と考えられる。本研究では、ジエチニルベンゼン(DEB)単一分子接合をSi-STM探針とSi基板の間に形成し、その伝導特性と分子形状効果についての研究を行った。これまでは電極間距離(探針-試料間距離)を伸縮方向(Z方向)に1次元的に変化させて分子形状を変化させていたが、より精密な分子形状制御を行うため本年度は新しい測定システムの開発を行った。新しいシステムでは、単一分子接合の片方の電極であるSTM探針をサブオングストロームの精度で3次元(XYZ方向)に走査しながら単一分子中を流れる電流を測定する。この新測定法を用いてDEB分子の形状を3次元的に変化させ、分子形状が伝導に及ぼす影響を調べた。DEB分子接合はこれまでに、電極間距離を近づけるとコンダクタンスが瞬間的に減少(スイッチング)することが確かめられ、分子形状がトランス体からシス体へと構造変化を起こしたことがその機構と予測してきた。今回新たに3次元計測を行うことによって、スイッチングが起こるZ位置はXY座標に強く依存し、分子を中心として球状に分布することを明らかにした。この結果は、上述の予測を強く支持するものである。スイッチング以外にも、電流が大きく流れやすい探針位置(分子形状)が3次元のスポット状に複数存在するなど、分子形状に対してコンダクタンスが複雑に変化する様子が観測されている。このように3次元に電極間距離を変化させる測定により、これまで分からなかった分子形状の変化による伝導特性の詳細な評価が可能になった。この手法は分子接合の種類によらず用いることが出来るため、様々な単一分子接合に対して広範な応用が期待できる。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件)
Nature Nanotechnology
巻: 9 ページ: 588-593
10.1038/nnano.2014.125
Nature Photonics
巻: 8 ページ: 815-817
10.1038/nphoton.2014.272
応用物理学会誌
巻: 83 ページ: 923-927
Nanoscale
巻: 2014 ページ: 14667
10.1039/c4nr04826a