研究課題
若手研究(B)
本研究の目的は「生体機能を模倣した単電子情報処理システムを構築すること」である。単電子デバイスは原理的に熱雑音や揺らぎに弱いことが知られている。一般的には作製プロセスの向上および極低温動作により問題の解決を目指すが,本研究では生体の持つノイズ・揺らぎ吸収機能および利用機能に着目するという従来とは別のアプローチから解決を図る他,未確立の単電子回路向けの情報処理アーキテクチャについて,生体の持つ情報処理機能に学ぶシステムの設計をし,単電子回路に適する手法であることを実証する。本研究の目的である生体機能を模倣した単電子並列情報処理システムの構築を実現するためには,大きく分けて3つのことについて検討をする必要がある。これは第一に,生体が持つ有益な機能の内「雑音・揺らぎを吸収・利用する機能」の単電子デバイスへの実装,第二に,生体機能の中の「機能的情報処理能力」を単電子デバイスによって実行すること,第三に,前述の「雑音・揺らぎ吸収/利用 単電子デバイス」と「生体様情報処理 単電子デバイス」との融合(最終目標)である。平成24年度において,「雑音・揺らぎを吸収・利用する機能」の単電子デバイスへの実装については当初の計画通り,熱雑音だけではなくデバイス作製エラー(ばらつき)をも吸収/利用して動作するシステムの構築可能性を見出し,国際会議・国内学会への研究発表につなげることが出来た。生体機能の中の「機能的情報処理能力」を単電子デバイスによって実行することについては細胞性粘菌の挙動の単電子回路化および蟻の挙動に学ぶ単電子回路等複数の内容についての研究を進め,それぞれ英語論文誌への投稿準備および学会発表を実施することができた。また,現時点での総括的な内容について招待講演も実施した。最終目標として掲げた内容については基礎理論を構築しているところである。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的である生体機能を模倣した単電子並列情報処理システムの構築を実現するために,次の3つのことを検討する。それは,(1)生体が持つ「雑音・揺らぎの吸収・利用能力」の単電子回路化,(2)生体の「機能的情報処理能力」の単電子回路化,(3)前述(1)および(2)の融合による最終目的の達成である。これについて,上述の研究実績の概要に示す通り,本年度は当初計画の通り(1)および(2)について主に研究を遂行した。(1)および(2)においては,関連研究においてそれぞれ国際会議発表や国内学会発表,論文発表(準備)を実施することが出来た。また,これらの成果は平成25年度以降の研究の十分な足がかりとなり得るため,概ね順調に進展していると評価できる。
上述の通り,平成24年度において(1)生体が持つ「雑音・揺らぎの吸収・利用能力」の単電子回路化,(2)生体の「機能的情報処理能力」の単電子回路化に関連する基礎部分の研究を遂行することができた。今後は,これを足掛かりに比較的大規模なシステムをプロトタイプとして設計し,シミュレーションにより検証する。(1)については回路規模を拡張し,その雑音・ばらつき利用性能を評価する。(2)については,現在進めている生体機能模倣システムの高度化に加えて,新たなシステムの導入についても並行して検討を進める。さらにはプロトタイプシステムの設計・シミュレーションによる動作デモンストレーションなども行う。これらを遂行しつつ最終目標である(3)前述(1)および(2)の融合も進めて行く。
該当なし
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
Proceedings of SPIE, Nanoengineering: Fabrication, Properties, Optics, and Devices IX
巻: 8463 ページ: 84631D_1-_8
10.1117/12.928922
巻: 8463 ページ: 84631E_1-_8
10.1117/12.928923
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 51 ページ: 06FE11_1-_5
10.1143/JJAP.51.06FE11
http://arrow.ynu.ac.jp/publication.html