研究課題/領域番号 |
24710150
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古橋 匡幸 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (50506756)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 光導波路 / ナノ粒子 / マイクロ流路 |
研究概要 |
本研究は、水溶液中に溶存している蛍光粒子を単粒子レベルで検出・識別し、生体分子や病原体の高感度検出に応用することを目標として開始した。そのために、個々の粒子を安価かつ高速に検出できる光導波路とナノ流路を組みあわせたデバイスの開発を行う。 本年度は、プローバーとなる細線型二酸化チタン光導波路対の基礎的な光学的性質を把握するために、数百ナノメートルから数マイクロメートル幅の溝を導波路を横断するように挿入し、そのギャップ構造に起因する伝播光の透過率の変化を調べた。測定した透過率は大きくばらついてたが、全体的な傾向としてギャップ幅が大きくなるにつれて透過率が減少する様子が見られた。この透過率の減少とばらつきの原因を探るために、幾何光学を用いてギャップ幅による光の透過率変化のシミュレーションを行った。この計算において、ギャップ内での光の広がりによる損失を考慮した理論式の構築を行い、ナノ~マイクロメートル幅の空間においてどの程度光が広がりながら伝播しているかを見積もった。結果として、ギャップ内における光の干渉効果と、伝播光の広がりによるリークが透過率変化の原因であることが分かった。また、上記のギャップ幅ならば蛍光分子を励起できる十分な光強度がギャップ内に存在することが判明した。 さらに、このギャップ導波路にマイクロ流路を接続し、量子ドット水溶液を流しながら導波路からの蛍光検出を試みた。純水を流路に流した場合と比較して明確な蛍光強度の増大が観測され、ギャップ導波路によってマイクロ流路中の蛍光粒子の検出が可能であることが証明された。さらに導波路から放出された光の照射体積と量子ドット濃度から検出感度の見積もりを行ったところ、ギャップ導波路デバイスを用いることで数百個レベルの量子ドットを検出できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、光導波路とマイクロ流路を組み合わせることにより蛍光粒子を単粒子レベルで検出するデバイスを開発するとともに、その検出原理の物理を構築することにある。その中において本年度の目標は、ギャップ構造を持つ細線型光導波路を構築し、その光学的な性質を明らかにすることで、次年度において必要となる最適な光導波路構造と流路の幅を得ることである。 ギャップ構造を持つ光導波路の作製プロセスの構築および導波路の光透過特性の調査については完了しており、ギャップ内における光の伝播現象を明らかにした。さらに、量子ドット水溶液を用いて、導波路を用いた蛍光検出の実証を行った。次年度における単粒子検出デバイスの作製に必要な構造、技術および物理は本年度において明らかになっており、容易に研究を進めることができると予想される。以上のことから、当研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度においては、これまでに研究してきたデバイス構造および導波路の特性を元に、単粒子検出を実現するデバイスの開発を行う。本年度に実施した量子ドット水溶液を用いた蛍光検出の実証実験から、励起光の混入が雑音の大きな原因になっていることが明らかになったため、デバイス構造の改善を最初に行う。具体的には、励起用と蛍光検出用の光導波路を直行した配置に作製し、励起光が蛍光検出器に入らないようにする。 検出対象の蛍光粒子には、市販されている直径0.04-0.5umのビーズを用いる。マイクロ流路中を流れるビーズから放出された蛍光を光導波路により集めて、本年度に購入した単一光子カウンターおよび次年度に購入予定のオシロスコープを用いて検出する。蛍光が放出され続ける時間から、蛍光ビーズのサイズ識別を試みる。さらに、光学フィルターを組み合わせた光学系を構築し、異なる蛍光波長をもつビーズの識別を試みる。サイズと蛍光波長の2つのパラメータを元に、個々の蛍光粒子の同定を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、本来次年度で購入予定であった単一光子カウンターを先んじて購入を行った。そのため、当初購入予定であったデジタルオシロスコープを次年度に購入する予定である。このオシロスコープは、光強度の時間変化を高速に検出するために必要不可欠なものである。また、検出サンプルとして、サイズと波長を複数組み合わせた蛍光ビーズを購入する。さらに蛍光波長の識別のために、励起用レーザーと光学フィルターの購入を検討する。
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