研究課題/領域番号 |
24710153
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
細野 一弘 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (10622813)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
電流によって磁化を駆動する電流誘起磁化反転技術が実証され、デバイス実用化が試みられています。 金属の界面に発現する強いラシュバスピン軌道相互作用は、この電流誘起磁化反転を高効率にするものと期待されています。しかし、従来の電流誘起磁化反転の理論の中にはラシュバ効果は考慮されていないため、 ラシュバ効果を利用するためには指針となる理論が不可欠です。 まず、界面のラシュバ効果を持つ金属ー強磁性体複合構造におけるスピン輸送を定式化しました。界面のラシュバ効果が強磁性体内に寄与すると考え空間的に非一様なラシュバ型スピン軌道相互作用を摂動として考慮し、電場によって誘起されるスピン流をグリーン関数のダイアグラム計算により計算しました。結果として従来から議論されてきたスピンホール効果やスピン蓄積による寄与に加えて、ラシュバ型スピン軌道相互作用の非一様性からもスピン流が生成される事を示した。これにより、実験で示されたスピン流吸収を議論しました。 一方で、拡散スピン流によるスピントルクの微視的解析も同時に進め、非局所配置測定で実現される拡散スピン流が実際に磁化に対してトルクを与える事を示しました。これにより、拡散スピン流によって大きなスピントルクを得るための条件、つまりスピントルクとスピン拡散長の依存関係及び、スピン注入位置と磁壁の中心位置までの距離依存性明らかにしました。これは、拡散スピン流によるスピントルクをデバイスに応用する場合の材料を選択する際に重要となる情報であり、今後の実験研究を促すものです。 研究実施計画に基づき、上記二つの研究を実行し、二通の論文が年度内に出版に至った。現在、これらの研究からさらに進展し、原子薄膜材料の電子輸送、スピン輸送特性の研究を実行中です。これは、当初の計画にはなかった研究であるが本研究課題であるラシュバ効果の研究遂行において本質的な役割を持つと考えています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に基づき、非一様ラシュバスピン軌道相互作用下のスピン輸送、拡散スピン流によるスピントルクについての二つの研究を実行し、二通の論文が年度内に出版に至った。現在、これらの研究からさらに進展し、原子スケールの薄さを持つ原子薄膜材料の電子輸送、スピン輸送特性の研究を実行中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究計画通りラシュバ界面におけるスピントルクの研究を進めるとともに研究計画には無かったが本研究課題に重要な役割を持つ原子薄膜系における電子輸送、スピン輸送の研究を進める予定である。特に原子薄膜の膜厚に依存して電子輸送、スピン輸送、及びスピントルクがどのように変調されるかについて明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
所属研究機関の変更(慶應大学から物質材料研究機構への移動)があり、予定していた計算機購入にかかる支出がほとんどかからなかった。このため次年度使用予定研究費が生じた。この研究費は、国際会議や国内の会議における旅費として使用する予定である。さらに研究状況を考慮しながら、物品等の購入を考えている。 翌年度以降についても、研究の進度に応じて物品費、旅費に使用する予定である。
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