医療の安全・質保証のため,医療業務における問題分析・対策立案を行うための様々な問題分析手法が提案されている.しかし,医療業務特有の複雑性を考慮した分析方法は確立しておらず,分析・対策の内容が,各医療機関の担当者の力量に依存しているのが現状である.本研究では,医療業務プロセスの構造的可視化に基づいて分析の観点を与えることで,従来よりも問題の発生状況を的確に把握し,問題分析を行う方法の開発を目的とする. 平成26年度は,共同研究を行っている医療機関(A病院,B病院)における手術を含めた高い生体侵襲を伴う医療行為に関する理解に基づき,A病院において収集された中心静脈カテーテル(CVC)挿入症例ごとに提出されるチェックシートのデータを用いて分析方法の開発を進めた.本研究では,問題の原因は,業務プロセスの脆弱性にあるという考えに基づいて分析手順の構築を行った.このためプロセスの脆弱性を的確に抽出できるよう,3ステップから構成される分析手順を構築した.Step 1:対象プロセスを構成するユニットプロセスの導出,Step 2:機能不全となっているユニットプロセスとその連鎖の把握,Step 3:機能不全ユニットプロセスに関する原因分析と対応策の検討である.Step1におけるユニットプロセスの導出では,生体侵襲を伴う医療業務プロセスについて得られた汎用的なユニットプロセスについて,問題分析の対象となっているプロセスの具体的内容へと変換して行うとした.提案した問題分析方法の妥当性を検証するため,A病院において,CVC誤挿入よる不整脈を起こした不具合事例に対して適用した.
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