近年,急速に発展している非侵襲的脳機能計測技術は福祉分野をはじめ様々な分野に応用されているが,本研究では,脳活動から消費者心理などを明らかにし,これを応用するニューロマーケティングに着目し,特に消費者の購買意思決定に影響を与えると考えられる口コミが脳活動に与える影響に関する研究を行った. 本研究では,脳活動の計測機器としてNIRS(OEG-16)を用いた.本研究で用いたNIRSは小型かつ拘束性が低いため,このような機器で十分な精度を得ることができれば,日常的な脳活動を用いたシステムの構築が可能になることが期待できる.本研究における実験では,口コミに対する脳活動を対象とするため,口コミ以外の要因を排除するために価格が統一されている映画の口コミを対象とした. 実験は被験者30名に対して行い,1被験者は口コミを78件閲覧する.実験ではポジティブな口コミとネガティブな口コミを用意し,被験者はこれらの口コミに対して,「良い」,「どちらでもない」,「悪い」の3択の評価を行う.前年度の研究において,「良い」と「悪い」,「良い」「悪い」と「どちらでもない」の脳活動には有意差が見られたため,さらに判別が可能であるかの検討を行った.判別のための特徴量として,時間領域,周波数領域の両方を検討し,さらに,口コミ閲覧時のどの時間帯を用いるかも複数のパターンを用いるなどの工夫を行った.判別器にはLDA,HMM,SVMを用いた.検証の結果,「良い」と「悪い」の口コミの判別率,「良い」「悪い」と「どちらでもない」の判別率は共におよそ70%の精度を得ることができた.十分な精度であるとは言い難いが,購買意思決定の補助として利用できる可能性を示すことができたと考えられる.また,これらの研究成果は,福祉分野,口コミ以外の購買意思決定要因(価格)にも応用することができた.
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