研究課題/領域番号 |
24710166
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鶴見 昌代 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (60349834)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゲーム理論 / 意思決定 / ラフ集合 / OR / システム工学 |
研究概要 |
複数の意思決定者が相互に作用しあっている状況での意思決定と分析には,協力ゲーム理論が有効である.しかし,旧来の協力ゲームでは扱えないような状況も数多く存在するため,近年新たな定式化が提案されている.本研究の目的は,既存の協力ゲーム理論を基に,より現実的・一般的な状況を取り扱うことのできる協力ゲームの定式化およびそれに対する解の導入を行うことで,協力ゲーム理論の枠組みと応用範囲の拡張・拡大を図ることである.昨年度は,複数の意思決定者が存在する状況下において,従来よりも合理的な意思決定法および分析法の構築を目標に,以下のような研究を行った. a. 拡張多選択肢ゲーム:拡張多選択肢ファジィゲームは,複数の選択肢をいくらかの割合ずつ選択できるという状況を扱う.これは,DVD の選定状況を例にすれば,各メーカーがそれぞれの規格に対して,少しずつ投資できるような状況を定式化したものであり,現実的である.このゲームに関する近年の研究成果について情報収集を行った. b. 双協力ファジィゲーム:双協力ファジィゲームは,たとえば,政党をプレイヤーとみなしたとき,そのメンバーの中で賛成する人も,反対する人も,中立的な人も混在するような場合に用いることができるゲームである.双協力ファジィゲームにおける解概念を議論した. c. その他のゲーム,情報解析などへの応用:協力ファジィゲームの解であるBanzhaf値について,性質を議論し,この成果を国内会議および国際会議で発表した.提携によって得られる値が区間となるゲームにおいて,解概念の性質やゲームの定式化の妥当性について議論した. これらの課題の研究の過程で,解決すべきさまざまな問題点が明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数の意思決定者が相互に作用しあっている状況での意思決定と分析には,協力ゲーム理論が有効である.しかし,旧来の協力ゲームでは扱えないような状況も数多く存在するため,近年新たな定式化が提案されている.本研究の目的は,既存の協力ゲーム理論を基に,より現実的・一般的な状況を取り扱うことのできる協力ゲームの定式化およびそれに対する解の導入を行うことで,協力ゲーム理論の枠組みと応用範囲の拡張・拡大を図ることである.これにより,複数の意思決定者が存在する状況下において,従来よりも合理的な意思決定法および分析法の構築を目指した.しかしながら,まだ完全な成果をあげることには成功しておらず,当初計画よりもやや遅れている状況である. 協力ファジィゲームにおける解であるBanzhaf値については,一定の成果が得られたため,学会発表を行うことができた.双協力ファジィゲームや提携によって得られる値が区間となるゲームの研究の過程では,様々な問題点が明らかになった.双協力ファジィゲームについては,解の定式化や意味づけ,仮定に関するより詳細な吟味が必要となり,時間を要している.また,提携によって得られる値が区間となるゲームについては先行研究がほとんどない.このゲームの数学的な取扱いのために,様々な定式化を試行・吟味しているが,まだ決定的な定式化には至っていない.この定式化の決定にはなお時間を要し,研究の遅れの主要因となっている.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究を基に,協力ゲームの拡張とその解,協力ゲームの応用に関する研究を続行するとともに,協力ゲームの解の拡張に関する研究を行う. a,b,cの理論的な整備を行い,理論的に深化させる.ゲームの拡張,解の提案,その合理性について議論する.ゲーム理論をラフ集合などの情報解析に応用して分析を行う研究を続行する.最適化問題へのゲーム理論の応用を試みる.ゲーム理論の応用の可能性を広げるため,より広い範囲の情報収集を行いつつ,実際の問題の解決のために協力ゲーム理論を用いた研究を行う.新たな問題に対しては,協力ゲーム理論のさらなる拡張が必要になる可能性が大きい.必要に応じて,新しい定式化,新しい解の提案を行う.この分野は近年研究活動が盛んであり,新しい研究が次々に発表されている.国内外の学会に参加し,同時に文献情報を積極的に収集し,他の研究者たちの成果を常に把握し,最新の研究を行う. 今年度はとくに次の課題に重点を置く予定である.一つ目は,「双協力ファジィゲームにおける解の定式化や意味づけ,仮定に関するより詳細な吟味」を行うことである.二つ目は,「提携によって得られる値が区間となるゲームの定式化,および,解の定義や性質の議論」をすることである. これらの一部を学生・院生との共同研究で行う.また,必要に応じて,プログラミングを得意とするアルバイトを雇用して,研究を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
本課題の遂行にあたって,現在特に問題となっている,「双協力ファジィゲームにおける解の定式化や意味づけ,仮定に関するより詳細な吟味」と「提携によって得られる値が区間となるゲームの定式化,および,解の定義や性質の議論」を解決するためには,これらに関連する書籍・論文誌などの収集が非常に重要である.20万円をこのために使用する.次に,本研究課題を実施するための計算機(DELL OPTIPLEX 9010 Core i7 プロセッサー搭載モデル 99979円),また機動力を高めるためにノートPC(MacBook Air 88800円)を購入する.計算機上で使用するソフトウェアおよび周辺機器(たとえば,データ管理や保存のための外付けハードディスク バッファロー HD-LS2.0TU2C 10000円など)を購入する.数値計算にあたっては,必要に応じてプログラミングを得意とする学生を雇用する予定である.このために10万円の使用を予定している.また,前述したように,本研究課題に関連する研究が近年国内外で盛んに行われている.他の研究者による最新の研究成果を常時把握するために,研究代表者ならびに共同研究を行う学生が,国内外の研究集会・学会などに頻繁に出席する必要がある.このための出張旅費として40万円を使用する.現在参加を予定している学会は,徳島大学で行われる日本OR学会2013年秋季研究発表会,台湾で行われる The 9th International Conference on Optimization: Techniques and Applications などである.また,研究成果の公表のために,論文投稿費,論文掲載料,別刷り代等を支出する予定である.
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