平成25年度は,洗濯乾燥機とスマートフォン(多機能携帯電話)を例として平成24年度確立した方法を用いて推計した機能ベースの保有台数について,各種製品の製品重量データや組成データを整理し,保有台数推計値に乗じることで物質ストック量の推移を推計した。また,多機能製品の機能利用実態をふまえて推計結果の考察を行った。 洗濯乾燥機については,製品重量は単機能の洗濯機や乾燥機と比べて大きいが,洗濯機と衣類乾燥機の両方を代替していることから,その普及によってこれら製品に係る物質ストック量は減少していると推計された。これより,洗濯乾燥機という多機能製品の普及は物質量で見ても社会における物質ストック量削減に貢献していることがわかった。一方,スマートフォンについては,従来型の携帯電話よりも製品重量が増加しており,またその他の単機能製品を全く代替していないことから,社会の物質ストック量はむしろ増加する方向に寄与していた。スマートフォンの普及は各機能の保有水準を押し上げており,機能へのアクセス性が高まったという点で消費者には好ましい状況とも解釈できる。しかし,音楽再生やデジタルカメラ機能の利用実態を見てみると,ユーザーの2割から3割がこれらの機能を使用していなかった。この結果から,製品機能を統合・追加した多機能製品の普及が不要な機能の提供と引き換えに物質利用量の増加を招いているケースも存在することが示唆された。 研究期間を通じて,製品機能に着目した機能ベースの耐久消費財ストック量・排出量の推計方法を確立し,いくつかの製品を事例に多機能製品の普及が単機能製品の代替を含む耐久消費財の物質ストック量・排出量の削減に寄与したか否かを推計,考察した。本手法は他の製品にも同様に適用可能であり,製品機能の統合・追加と社会の脱物質化の関係を定量的に計測することが可能となった。
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