本研究は,装着型ロボットの実用化に際して課題となる,ロボットの装着から生じる動作制約を原因とする転倒(以下,装着起因型転倒)を対象とし,その転倒リスクおよび削減方法の定量化を目的としている.そのため,始めに動作制約などの各種転倒要素が転倒可能性および負傷の程度に与える影響を推定するための実験装置開発および実験を行った.実験装置は,計測システムおよび模擬装着型ロボット(以下,模擬ロボット)からなる.計測システムは,被験者の位置,姿勢,床反力等を同期取得するためのものである.また,模擬ロボットは,装着型ロボットに予想される転倒要素を実験的に再現するために製作したものであり,各関節へのアシストおよび転倒惹起を行うものである. 次に,模擬ロボットを装着し,歩行実験を行った.その際,ロボットの調整不良,動作干渉等の転倒要素を有する条件を用いる事で,それら条件による歩行安定性の変化を計測,評価した.モーションキャプチャ装置,フォースプレートを用いた計測により,一部の条件において,関節屈曲角度,歩行速度,ケイデンス等の歩容パラメータについて有意な差が計測された.これらの結果は,障害物に対する足かけ等のリスクの増大,重心の動揺など,転倒リスクの増加を示唆するものである.さらに,人体動作解析シミュレーションにより,関節トルク,人体各部への負荷を推定し,模擬ロボット装着時の歩行が装着者に与える肉体的負荷の評価を可能にした. さらに,転倒要因に対する転倒リスクを評価するため,複数回の歩行実験を行った.転倒要因としては,障害物による躓き,アシストタイミングの不一致等を想定した.これらの実験により,転倒惹起時の装着者の転倒回避挙動は一種の代償歩行と同様の傾向を見せることが明らかとなった.こうした結果より,装着者の転倒回避戦略の一端が明らかとなった.
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