研究課題/領域番号 |
24710187
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
渡邊 紀文 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 助教 (30534721)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歩行誘導 / 自己運動感覚 / オプティカルフロー / 周辺視 / 体性感覚 / 知覚モデル / 自律ロボット / 追従行動 |
研究概要 |
平成24年度は,パーソナルモビリティ搭乗者の心理負荷軽減を目指した視線及び体性感覚の誘導の研究を行った.具体的には歩行者にヘッドマウント型周辺視ディスプレイを装着し,左右方向のオプティカルフロー刺激を提示することで歩行者の自己運動感覚を制御し,視線方向を誘導した.更に前脛骨筋に振動を提示することで体性感覚の信頼性を低下させ,視覚刺激に対する感受性を増加させることで,その状態での歩行者への誘導効果を評価した.計測では視覚刺激及び身体動揺刺激の影響を評価するため,モーションキャプチャによる全身計測を行い,計測結果から,視覚刺激による誘導効果は足が着地している状態から遊脚状態へ移行する歩行周期で発生し,視覚刺激提示から3sec後に100~150mm程度歩行者が誘導されることが確認された(渡邊2012, Watanabe2012).更にオプティカルフローを前進方向及び水平左方向へランダムに提示したときの誘導効果を評価し,視覚と体性感覚の統合機構について検討した(森2012). 更にパーソナルモビリティと歩行者のすれ違いの実現を目指し,歩行者の行動意図を推定して追従する自律移動ロボットの開発を行った.本研究では追従の対象となる歩行者を観察し,その行動意図を推定して歩行していると考えられる人間の追従行動を分析することで,その経路と左右方向への移動タイミングの特徴を明らかにした.具体的には歩行者は追従の対象となる歩行者が左右へ移動する1~2歩前で相対距離を約50mm広げることで移動方向を推定し,その後約2歩で左右への移動を実現していることが明らかとなった.そこで人の左右への追従タイミングで移動する特徴を,自律移動ロボットにより強化学習を用いて学習し,追従行動の実装を行った.これにより,学習前と比較し短距離で追従対象者に追従することが可能となった(吉岡2012).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的である「モビリティ自体が対向する歩行者の行動を推定する人間行動モデルを搭載し,搭乗者の自己運動感覚を利用することで安全な行動誘導の実現を目指す.」に対し,本年度は視覚刺激及び身体動揺刺激を利用した自己運動感覚の制御及び歩行誘導を実現し,その誘導効果及び誘導タイミングについて定量的に分析を行った.これによりモビリティが歩行者とすれ違うために移動方向を変化させる前に,視覚刺激及び身体動揺刺激でどのタイミングでどの程度の刺激で誘導を与える必要があるのかについての指針が得られた. 更に歩行者の行動を推定して追従する自律移動ロボットを開発し,強化学習により歩行者の行動意図を推定してスムーズに追従することが可能となった.開発で使用した自律移動ロボットの制御モデル及び,歩行者検出を行うMicrosoft Kinectによる赤外線カメラ計測は,今後の自律ロボットのすれ違い移動へも応用可能であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,モビリティ搭乗者へのHMDを利用した移動経路情報提示を目指し,すれ違い行動時のモビリティ搭乗者の視線の軌跡及び滞留時間をアイカメラを利用して計測する.ここで視線移動タイミング及び回避行動タイミングを分析することで,安全なすれ違いタイミングを明らかにする.更にシースルー型HMDを利用して視線移動タイミングの直前に移動経路を提示し,その反応時間を評価して刺激提示タイミングを明らかにする. 自律移動ロボット制御については,現在使用している移動ロボットでは移動速度がすれ違いを行うのに十分ではないため,25年度はシミュレータを用いた自律移動ロボットとのすれ違いを行う.具体的にはOpen Dynamics Engine(ODE)をベースとした対人ロボット開発シミュレータSIGVerseを利用し,歩行者の行動はKinectやレーザーレンジファインダ等のセンサ情報を用いて取得し,シミュレータ上のロボットの制御を行う.これにより,今後実際のモビリティを利用した歩行者とのすれ違いにおける行動決定モデルの構築を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の計画として,すれ違い時の移動方向提示を行うため,シースルー型HMD「Vuzix STAR 1200XL」を購入する予定である.更に対人ロボット開発シミュレータSIGVerse上で歩行者を認識する際に必要なセンサデバイスとして,赤外線計測センサを搭載する「ASUS Xtion PRO LIVE」を購入する予定である. 更に本年度は24年度の研究成果をファジィシステムシンポジウム2013及びIEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics 2013にて発表を行うためその経費及び,被験者実験を行うための謝金の支払いを予定している.
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