研究課題/領域番号 |
24710187
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
渡邊 紀文 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 助教 (30534721)
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キーワード | 歩行誘導 / 自己運動感覚 / 知覚モデル / 自律移動ロボット / 動作認識システム / すれ違い行動 |
研究概要 |
平成25年度は次の1から5までの研究成果を得た.「1.パーソナルモビリティ搭乗者の自己運動感覚に錯覚を与えるための視覚刺激の開発および体性感覚刺激デバイスの小型化」では,振動デバイスを小型モータ1個に変更することで重量を減らし,歩行時の負担を減らした.また従来の左方向への視覚刺激に対し右方向への刺激を提示することで,利き足の違いにより誘導効果の違いがあることを明らかにした.「2.視覚刺激提示に対し優位に注意を向け,回避方向の意思決定に影響を与えるための知覚モデルの構築」では,視覚と体性感覚の感覚統合と視線方向への誘導可能性について,排他的及び重ね合わせによる知覚条件の議論および,視覚的注意課題時に活動が高まるといわれている第4次視覚野のニューラルネットワークを構築し,視覚刺激の誘導効果を優位に高めるためのモデルを構築した.「3.歩行者の足の形状からその回避方向を推定する自律移動ロボットの開発」では,対向者の足の向きを強化学習により学習し,回避方向を推定して移動する自律移動ロボットとのすれ違い歩行実験を行い,パーソナルモビリティへの実装の基盤を作成した.「4.Microsoft Kinectで取得した歩行者のバイオロジカルモーションデータから,歩行動作を認識するシステムの開発」では,MicrosoftKinectで2人の歩行者がすれ違う行動データを計測し,そのバイオロジカルモーションデータから歩行者を弁別して歩行動作を認識するシステムを開発した.「5.すれ違い行動時の歩行者の行動意図を推定するための仮想環境でのすれ違い行動実験」では,受動的および能動的に移動する歩行ロボットに対し,歩行者がどのように行動意図を切り替えて行動するのかを,仮想環境であるSIGVerseを利用して実験および評価し,パーソナルモビリティとのすれ違い時の歩行者の行動意図推定方法を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画である「モビリティ自体が対向する歩行者の行動を推定する人間行動モデルを搭載し,すれ違い行動実験を行う」事に対し,本年度は対向者の足の向きから回避方向を推定しすれ違いをするアルゴリズムの構築及び自律移動ロボットの開発,また複数歩行者動作認識システムの開発により,パーソナルモビリティが自律的に複数歩行者を判別し,その回避方向を推定することが可能になった.更に受動的・能動的行動をするロボットに対する歩行者の認知モデルを構築することで,パーソナルモビリティが受動的・能動的な行動をしたときの対向者の行動を予測することが可能となった.更にパーソナルモビリティ搭乗者の自己運動感覚制御のための誘導デバイスの最適化,誘導効果を高めるための知覚モデルの構築を行った.これらの研究により,人間の知覚情報処理メカニズムに基づいた刺激の最適化が可能になった. パーソナルモビリティによる歩行者判別及びその意図推定の基盤の設計,更に歩行者への知覚刺激の最適化が終了したため,次年度は歩行者とのすれ違い移動が可能な自律移動型パーソナルモビリティを開発し,歩行者とのすれ違い実験およびモビリティ搭乗者への誘導効果を評価する.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は自律移動可能なパーソナルモビリティを作成し,対向者の足の向きから回避方向を推定しすれ違いを行うよう制御する.具体的にはMicrosoftKinectを利用して複数歩行者の中からすれ違い行動を行う歩行者を判別し,その歩行者の足の向きをレーザーレンジファインダを用いて計測することでその回避方向を推定する. またモビリティ搭乗者に視覚刺激および体性感覚刺激を提示し自己運動感覚を制御することで.モビリティが左右方向にすれ違い移動をするときの心理的負荷が軽減するのかについて評価を行う.具体的にはこれまで作成したヘッドマウント型ディスプレイに視覚刺激を提示し,更に小型振動モータにより着地時の体性感覚に錯覚を与えることで,モビリティが左右に移動したときの方向へ自己運動感覚を誘導する. 更に対向する歩行者の回避タイミングを予測し,モビリティの受動的および能動的行動戦略モデルを構築するための行動実験を行う.これまでの研究から歩行者は歩行の遊脚前期において回避方向の判断を行うという結果が得られており,そのタイミング前後においてモビリティが受動的および能動的戦略をとったときの,対向する歩行者の行動の分析および評価を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
パーソナルモビリティ作成部品の一部を次年度の予算と合わせて購入することになったため. 平成26年度の計画としてパーソナルモビリティを作成するため,ホイール,バッテリ,モータ等の駆動系,また角速度センサおよび加速度センサ等の計測機器を購入する予定である.またパーソナルモビリティを利用した行動実験を予定しているため,被験者への謝金を予定している. 更に平成25年度の視覚的注意課題のニューラルネットワークモデルの研究成果を,International Conference on Artificial Neural Networks 2014にて発表するため,その経費の支払いを予定している.
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