研究課題/領域番号 |
24710187
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
渡邊 紀文 東京工科大学, コンピュータサイエンス学部, 助教 (30534721)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歩行誘導 / 自己運動感覚 / 知覚モデル / パーソナルモビリティ / 動作認識システム / すれ違い行動 |
研究実績の概要 |
平成26年度は次の1から4までの研究成果を得た.「1.歩行者の回避方向を推定しすれ違い行動をするパーソナルモビリティの実装」では,搭乗者の重心の移動で前後方向に加速し,ハンドルで左右方向に移動するパーソナルモビリティを作成した.更にモビリティに赤外線及びRGBカメラを搭載し,歩行者の左右の足の位置と足先の向きから回避方向を推定するアルゴリズムを実装した.歩行者との行動実験を行った結果,7割の精度でモビリティが回避することに成功した.「2.パーソナルモビリティ搭乗者の心理負荷低減を目指した半自律制御モデルの実装」では,歩行者の回避方向推定結果に基づいて自律的に回避を行う制御モデルおよび,搭乗者の左右方向へのハンドルの移動を考慮し,半自律的に回避を行う制御モデルを構築した.行動実験による評価から,自律制御時は搭乗者は周囲に注意を向けておらず危険な状態であったが,半自律制御時は周辺にも視線を移動しており,注意を分散しより安全に回避行動を取っていることが示された.「3 .パーソナルモビリティの能動的回避制御を目指した仮想環境でのすれ違い行動実験」では,モビリティの能動的な回避により歩行者の回避行動を誘導する制御モデルの実装を目指し,仮想環境を利用した行動実験を行った.実験の結果,能動的な回避を行うことで歩行者の行動を誘導し,回避タイミング及びその移動距離を変化させることに成功した.「4.注意制御及び行動意図推定モデルの拡張及びすれ違い行動以外への応用」では,視覚刺激に対する脳のトップダウンのモジュレーションにより注意制御を向上させるニューラルネットワークモデルを構築し,国際会議で発表した.またすれ違い行動での能動及び受動の行動推定モデルを,サッカー選手の受動及び能動的なパス選択行動へ応用し,シミュレーション実験において人のパス行動の推定精度を評価し論文誌に採録された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画である「歩行者の回避行動を推定し,更に搭乗者の心理的な負担を軽減するパーソナルモビリティの実装」に対し,前年度に行った歩行者の足の向きから回避方向を推定しすれ違いをするアルゴリズムを,新たに作成したパーソナルモビリティに実装し,7割以上の精度で回避行動を取ることを示した.更に歩行者の回避行動に対する意図推定を行い,パーソナルモビリティが能動的に回避することで歩行者の行動を誘導する制御モデル,また搭乗者のハンドル操作を考慮したパーソナルモビリティの半自律制御モデルを構築した.これらにより,歩行者との安全なすれ違い行動を実現し,更に搭乗者の心理負荷を軽減したパーソナルモビリティの実現に成功したと考えられる.また本研究の基礎となる注意制御のモデルおよび,行動意図推定モデルにおいても,すれ違い行動以外へ適用し,新たな成果を得ることが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は搭乗者の注意を制御し心理負荷の軽減を目指した行動実験を行う.これまでの実験から,パーソナルモビリティの半自律制御時に搭乗者は歩行者の上半身及びその周辺への注意の分散の現象が見られたが,回避制御を行う際に移動方向に注意を正確に向けることが出来ていないため,自己運動感覚との不一致がおき危険を感じる様子が見られた.そこでパーソナルモビリティ搭乗者に視覚刺激および体性感覚刺激を提示し,自己運動感覚を制御する.具体的には25年度に開発したヘッドマウント型ディスプレイに視覚刺激を提示し,小型振動モータにより着地時の体性感覚に錯覚を与えることで,モビリティが左右に移動した方向へ自己運動感覚を誘導する.更に歩行者の回避タイミングを予測し,パーソナルモビリティが能動的回避制御をとったときの搭乗者の視線およびその心理負荷を分析する.これにより,より安全で安心なすれ違い行動を実現する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に実装したパーソナルモビリティの部品を安く購入することが出来たため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の計画として,搭乗者の重心移動を評価するための圧力センサを購入し,パーソナルモビリティの改良を行う.またパーソナルモビリティを利用した行動実験における被験者の謝金,更に論文の投稿および国際会議発表の費用として使用する予定である.
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