本研究では、専門家から非専門家への一方向の知識・技術の伝達を目指す防災教育ではなく、両者の双方向の学び合いである「防災共育」の実現に向けて、理論的研究ならびにその理論に基づいた実践を実施した。 本研究の最終年度に当たる平成27年度は、前年度に実施することができなかった大阪府津波・高潮ステーションにおけるワークショップを実施した。当初は、複数回の連続ワークショップとして、大阪府内の博物館等に広報を依頼するなどして参加者を募ったが、申し込み者が極端に少なく、ワークショップを開催することができなかった。そこで、関係者で内容を再検討し、連続開催が負担に感じられるのではないかという結論に達したことから、1日完結型のワークショップとして再募集を行った。その結果、十分な申し込み者を得ることができ、12月20日に実施することができた。 ワークショップでは、どのような防災学習施設(津波・高潮ステーション)を目指すのかということを治水事務所職員という専門家と大阪府民がともに議論することで、それぞれが考える津波・高潮防災の意味を共有し、大阪の津波・高潮防災のあり方を共同構築することを目指した。その結果、専門家も市民も互いに大阪の津波・高潮防災とはどのような活動であるのかということを再確認することができ、両者がお互いから学び合う「防災共育」が生じたことが確認された。 また、防災学習施設が当該地域の防災のあり方を反映しているとの考えから、比較的長い歴史のある防災学習施設である雲仙岳災害記念館において、施設の運営方法や市民参加の方法等に関する聞き取り調査を行い、島原地域の防災のあり方が記念館にどの程度反映されているのかを検討した。
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