研究課題/領域番号 |
24710192
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
松木 裕二 福岡工業大学, 工学部, 准教授 (00315128)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 交通事故モデル / シミュレーション / 衝突確率 / 交差点 / 注意 / Driving Simulator |
研究概要 |
平成24年度の研究においては,見通しの悪い交差点通過時の運転の危険性を客観的に評価することを目的に,交差点での出会い頭事故モデルを構築し,そのモデルに基づいた計算機シミュレーションをおこなった.申請時の予定では,先に運転者の注意特性と反応時間の関係性について実験的調査を実施する予定であったが,実験装置(Driving Simulator)の開発の遅れや計測機器の不具合があったため,予定を変更し,先に出会い頭事故モデルの構築とその評価を行うことにした. まず,交差点モデル,車両モデル,運転者モデルの三つからなる数理学的な出会い頭事故モデルを構築した.このモデルにモンテカルロ法を用いたシミュレーションを適用し,以下の6つの状況の違いについて,交差点での出会い頭事故の危険性を調べた. ①車両の走行速度変化による影響,②交差点までの距離変化による影響,③車両側方から路肩まで距離変化による影響,④交差道路の交通密度による影響,⑤交差点の形状の違いによる影響,⑥交差点進入時の走行方法の違い(一時停止方法の違い)による影響 その結果,これまで主観的にしか評価できなかった交差点での危険性について,定量的な評価を与えることが可能になった.さらに,従来の運転危険性評価に比べて,より多面的な評価を可能にする新しい2つの指標(危険事象発生確率,総合的な衝突確率)を提案し,その有用性を確認した. このようなシミュレーションで得られた知見は,平成25年度に開発予定の実時間での安全運転支援装置開発に役立つことが十分に期待される.また,安全教育の分野においても,本研究で得られた知見は有用な資料になるものと思われる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,以下の4つのテーマについて研究を進める予定であった. ①注意特性と反応時間に関する研究,②反応時間分布の推定,③交差点での出会い頭事故モデルの構築,④衝突確率による運転評価の有効性検証 これらのうち,①と②については,実験装置の開発の遅れおよび測定装置の不具合により平成24年度内に完了することは出来なかった.ただ,現在はDriving Simulatorの開発も目途がつき,平成25年度の前半中に実験は完了する予定である. ③は,一部の反応時間分布を利用するシミュレーション以外は,ほぼ完了した.④についても,Driving Simulatorの開発が完了次第,取り掛かることができると思われ,検証実験も年度内には完了する見込みである.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究の推進方策は以下の通りである. 1.運転者の注意特性と反応時間の関係(4月~8月):Driving Simulatorの開発を完成させ,交差点での運転者の注意特性に関する実験を実施する.これにより,運転者が交差点進入時にどのように行動し,注意資源を配分するのかを明らかにする.また,これにより,運転者の反応時間分布を推定することを試みる. 2.衝突確率による運転評価の有効性検証(9月~翌年1月):先に求めた運転者の反応時間分布を平成24年度に調べたシミュレーション結果に適用し,Driving Simulator上で運転の危険性をリアルタイムに評価するシステムを開発する.このシステムが完成することによって,運転者の視線や交通状況に応じた危険性評価が可能になる. 3.研究のまとめ(2月~3月):2年間の研究についてまとめる.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の使用計画:備品としては,Driving Simulator用のPC一式,解析用のPC一式,画像処理装置一式,運転者の眼映像撮影用のカメラを購入する予定である.これらの装置は,平成24年度に購入する予定であったが,Driving Simulatorの開発の遅れおよび視線計測装置の不具合により,実験実施が困難となっていた.しかし,現在では,実験実施の目途が立ったため,本年度にこれらの装置を購入し,予定されていた研究計画を効率的に遂行する予定である. また,旅費の殆どは,国内外の学会の旅費として利用する予定である.そのほかには,Driving Simulatorを用いた実験参加者への謝金およびデータ解析の整理作業に対する謝金,論文の印刷費に充てる予定である.
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