本研究では,視線情報を考慮した運転危険性評価を行った.まず,刺激呈示位置と反応時間の確率密度関数の関係を求めるために反応時間計測実験と数値解析を行った.その結果,反応時間をex-Gaussian分布を用いて表すと,視線と視覚刺激位置との角度が大きくなるにつれて分布の平均は大きくなり,分散が大きくなることが明らかとなった.また,視野内の刺激呈示位置60°付近から見落としによる反応時間の遅れが発生しやすくなることが分かった. また,先の実験で求めた刺激呈示位置と反応時間の確率密度関数との関係を利用して,モンテカルロシミュレーションをおこない,運転者の視線情報を考慮した運転危険性評価をおこなった.この結果,見通しの悪い交差点において,自車の速度を5km/h,自車と交差車両の路肩距離を0.5mとした場合,視線の向きの違いにより最大で衝突確率が約6%変化することが明らかとなった.左40°付近に視線を傾けて交差点に進入することで衝突確率が最も低くなり,右65°以上で最も高くなることも明らかにした. 本研究では本来,作成したシミュレーションプログラムを用いてリアルタイムに衝突確率を計算,表示するドライビングシミュレータの製作を予定していたが,ドライビングシミュレータの製作までは完成しなかった.しかしながら,実験で明らかにした視線方向と反応時間の確率密度関数の関係性が明らかになったことから,衝突確率をリアルタイム表示するシステムの開発も十分に可能であると考えられる.
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