本研究は、津波警報発令時に航行中の船舶および港内の船舶が避難することを想定し、避難船舶の危険度について動的シミュレーションを用いて検討することを目的とした。検討対象海域は、交通量が多く輻輳度が高い大阪湾とした。 最終年度は、まず複数の船舶が津波警報発令時に一斉に避難する時、大阪湾の中でも特に潮流の流速が速く潮位変位が大きい明石海峡を通過し、より広い海域に移動できるか動的シミュレーションを行い検討した。また、前年度に大阪湾の主要な港である堺泉北港を対象に船舶の港外避難シミュレーションを実施したが、最終年度は対象とする港を追加し再度検討した。AIS受信データを用いて大阪湾の港内の船舶数を把握し、船型による船舶の出港順序および出港間隔を港ごとに設定し、待ち時間の長短により津波下での避難船舶の安全性に変化が生じるか検討した。 これまでの成果をふまえて、大阪湾において津波来襲時に複数の船舶が一斉に避難を開始した時、1)航路において輻輳し衝突などの危険が発生しないか、2)港内の船舶が港外避難し沖合に避泊しようとする時、船舶が津波来襲までに避難が完了できるか、3)津波来襲までに避難が完了できない時、津波の影響を受けながら避泊地まで移動できるか、4)避泊地において船舶が津波を安全にやり過ごすことができるか。について検討した。 その結果、一部海域において津波下で船舶の挙動が大きくなり衝突の危険が増えるものの、シミュレーション結果を基に提案した船舶間の距離を取ることにより津波を安全にやり過ごすことができることを示した。また、シミュレーション結果から港口において避難時に待ち時間が生じても津波流および潮流下で船舶は避難海域まで移動できることを示した。
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