研究課題
本研究では,ダブルクローラ方式を採用した担架システムを開発し,傷病者をわずかな力で担架へ乗せ,そのまま階段昇降も行うことを目的としている.最終的には,担架システムに局部圧迫防止や振動抑制の機能を付加することで,重度傷病者を安全かつ迅速に救助可能なシステムの開発を目的とする.期間内に以下の2点の項目を実施し,成果を得た.①担架システムの階段昇降機構の改良:五角形の車輪を複数個連結する階段昇降機構を試作した.その結果,従来のシステムに対して階段上昇速度が約3倍以上,階段降下速度も約1.5倍に向上したが,可搬重量の増加に伴い,滑りが発生した.そこで,車輪の素材・形状を検討し,アルミ材の表面にゴムを貼り付けた車輪に変更し,車輪の形状も引っかかりを良くするよう改善した.その結果,ゴムを貼り付けたアルミ車輪は,従来システムより滑りを低減することができ,担架を3人で運ぶ際の速度9.3m/minを上回る10.9m/minの上昇速度を実現できた.②非線形構造による振動低減装置の開発: 手持ち式担架に人を乗せて搬送作業を行い,そのときの振動を計測し,発生する振動の大きさ・方向・周波数などの特性を把握した.その計測結果より振動低減の方法を検討し,振動低減装置を製作した.具体的には,手持ち式担架や,本研究で目指す担架システムの搬送速度は,消防車の搬送速度とは異なり,2~3.5Hz程度の低周波領域で振動が発生する.そのような低周波領域では,通常の縦バネや,エアマット等による振動低減ではなく,非線形構造による振動低減が効果的とわかった.そこで,非線形構造を有した振動低減装置を設計・製作し,その装置を用いて搬送時の振動計測を行った.その結果,各搬送速度における加速度の値が防振なしに比べ,飛躍的に小さくなり,RMS値を用いて装置により搬送時に発生する振動を約60%低減させることができることを確認した.
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Journal of Robotics and Mechatronics
巻: Vol.26 No.4 ページ: 496-504