研究課題/領域番号 |
24710195
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
蒔苗 久則 科学警察研究所, 法科学第四部, 主任研究官 (20415441)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 信頼性工学 / 裁判科学 |
研究概要 |
近年、街頭や店舗に設置された防犯カメラの普及に伴い、コンビニ強盗などの犯罪の模様が記録される機会が増加している。動画とともに録音された犯人の発話内容は犯罪の全容解明のための重要な手がかりであり、事件によっては唯一の手がかりとなるものの、店内放送などの著しい背景雑音により聴取が完全に不可能となる例が少なくない。そこで本研究では、こうした際に発話内容の理解を可能とするための手法の開発や信頼性の評価を行う。 平成24年度は、開発に使用する音声データの予備的な収録を行った後、信号処理技術を用いた雑音抑圧手法の開発を中心に行った。店内放送として用いられた音楽などの背景雑音は、音声に加算的に録音されるため、雑音の特性を高精度に推定・表現できれば、減算による雑音の抑圧が有効である。さらに法科学的な応用では事後的な処理が主であるため、雑音特性の推定に、その音源の利用が可能であり、効果的な抑圧が期待できる。実際に雑音抑圧処理に広く用いられているスペクトルサブトラクション法に基づく処理を試みたところ、一定の効果を確認した。しかしながら、推定誤差に起因すると考えられる雑音が発生し、特に雑音の特性が急峻に変化する時刻での聴取性低下が顕著であった。次に信号の表現にNMF(非負行列因子分解)を利用した雑音抑圧手法の開発を行った。NMFは、信号に含まれる周波数成分を表現する行列と、各々の周波数成分の時間・強度特性を表現する行列の積により信号を表現する。そのため、これらの特性が分離して表現されており、抑圧性能を向上させるための事後的な操作が容易である。実際に、NMFを用いて得られた時間特性を事後的に操作したところ、聴取性が改善される事を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、著しい背景雑音の混入により信号対雑音比(SNR)が低下したため聴取困難となった音声信号から、発話内容の理解を可能とする手法について、本年度は主にNMF(非負行列因子分解)を信号表現に利用した手法の開発を行った。 計画時には、平成24年度は主として雑音抑圧手法の開発や性能評価に使用する音声データの収録を大規模に行い、信号処理技術を利用した雑音抑圧手法の開発については副次的に行う予定であったものの、実際には、雑音抑圧手法の開発を主に行った。これは、当初の想定よりもNMFを利用した雑音抑圧手法の実装が順調に進み、さらにスパース性の利用などについての着想を得たためであり、当初の計画よりも進展したと思われる。しかし、音声データの収録については予備的な収録にとどまっているため、総合的には「おおむね順調に進展している。」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度については、平成24年度に開発を進めたNMF(非負行列因子分解)を信号表現に利用した抑圧手法をさらに発展させるのと同時に、以後の研究に必要となる検討用音声データの収録を行う。NMFを用いた手法については、スパースNMFの利用を試みる。また、NMFを利用した手法以外にLVT等の正弦波モデルを利用した手法の開発に着手する。平成26年度以降は、これらに加え、音声の機械認識システムを利用した手法の開発や聴取による性能評価実験を計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の交付額が申請額から変更されたため、現有設備の活用や研究協力者の参画などによる研究計画の変更と研究費の使用計画の見直しを行った。その結果、研究協力者が使用する計算機、学会発表や情報収集に必要な経費などを計上した。しかし、研究協力者の選定と事務手続きに当初の想定よりも遅れが生じ、また、適切な国際会議への出席を見合わせたために繰越金が発生した。そのため、平成25年度への繰越金は、これらのために利用する予定である。
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