研究課題/領域番号 |
24710200
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
片岡 香子 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (00378548)
|
キーワード | 火山 / 洪水 / 土砂災害 / ラハール / カルデラ / ダム湖 / 地中レーダ / 火山防災 |
研究概要 |
本年度は,屈斜路カルデラ北方の斜里平野周辺の台地を構成する火砕流堆積物・ラハール堆積物の地質断面観察と堆積相解析を行い,上下流方向や側方への堆積物の分布を把握し,次年度のGPR探査のための用地を選定した。また,沼沢カルデラ周辺では,実際の露頭断面が広く観察できる土採場などでGPR探査を実施し,露頭で認められる堆積構造とGPR断面とのすり合わせを行った。 斜里平野周辺では,屈斜路カルデラから発生したKp1火砕流噴火後のラハール堆積物を検討した。ラハール堆積物は開析された火砕流台地を埋積するように発達したsupra-ignimbrite lahar相と考えられる。堆積物には,トラフ型斜交層理やscour and fill構造が顕著に発達し,まれにガラス質火山灰層の挟在が認められる。このことは,噴火後,斜里平野周辺では浅い網状流路が発達し,ラハールイベントやその後の網状流路内での火砕物の再堆積が起きたことを示す。このような流路の形態はGPR探査でも確認できる可能性が高い。 沼沢カルデラ(沼沢湖火砕流噴火)周辺でのGPR探査では,Sensors & Software社製Pulse EKKO PRO(1000V),アンテナは100MHzを使用した。CMP (common mid-point)法により地層中の波の伝わる速度を求めることで,GPR断面のパタンだけでなく,深度についても正確に一致させることができた。探査では,表層から深度12m程度までの堆積物の内部構造を読み取ることができた。いずれの地点でも下位にある火砕流堆積物の深度には,GPR断面では明瞭な反射面が見られなかった。また,降雨型ラハール堆積物と決壊洪水堆積物とは,GPR断面がそれぞれ特徴的で差異が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は,屈斜路カルデラ周辺については,調査対象となる地域が広域であるので,地質・地形調査を実施し,地層や堆積相の分布を把握したにとどまり,GPR探査を行うことができなかった。しかしながら,その他の地域については順調にGPR探査が実施できており,さまざまな堆積物に対するGPR断面を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度の屈斜路カルデラ周辺でのGPR探査は調査地域を絞って行う。その他の地域については,順調にGPR探査を実施しており,さまざまなカルデラ火山周辺地域における火砕流堆積物・火砕サージ堆積物・ラハール堆積物(降雨型・決壊洪水型)のGPR断面を得ているため,それに基づく各堆積物の堆積構造やベッドフォーム,チャネル形状の検討を行う。また,GPR断面から推察できる堆積物の分布から堆積量の見積もりを行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度の使用額は請求額とほぼ同額であり,次年度使用額が生じたのは,前年度からの繰り越しが多かったためである。また,協力研究者を含めて現地で探査作業ができたため,探査における補助人数を減らすことができ,謝金による支出が抑えられたためである。 今年度も協力研究者が比較的長期間,研究代表者を訪問するため,より多くの日数を地質調査と地中レーダ探査に費やす。また,探査機器や測量機器のアップグレードをするための部品を購入する必要が出てきたため,昨年度実施しなかった研究費の一部をそれにあてる。
|