研究実績の概要 |
本年度は,屈斜路カルデラ北方の斜里平野周辺の火砕流堆積物・ラハール堆積物により構成される台地上でGPR探査を実施した。また,実際の露頭断面が広く観察できる土採場でも探査を実施し,露頭で認められる堆積構造と,GPR断面との比較を行った。探査機器は,Sensors & Software社製Pulse EKKO PRO(出力1000V),アンテナは100MHz(アンシールド型)と250Mhz(シールド型)を使用した。CMP (common mid-point)法により地層中の波の伝播速度を求めた結果,2つの地域(三井,小清水周辺で)それぞれ0.06 m/ns, 0.07 m/nsの値を得た。結果,表層から深度8m程度までの堆積物の内部構造を読み取ることができた。 斜里平野周辺では,前年度までの調査により,屈斜路カルデラから発生したKp1火砕流噴火後のラハール堆積物の堆積相が,火砕流台地を埋積するように発達した,supra-ignimbrite lahar相であることが明らかとなった。ラハール堆積物には,トラフ型斜交層理やscour and fill構造が顕著に発達することから,ラハールイベントや網状流路内での火砕物の再堆積が起きたと解釈できる。GPR断面では,下に凸のチャネル状形状がよく見られ,反射面の側方への連続性が悪い。GPR断面でのチャネルは深さ数10cmから1m,幅が数m-10m程度のもので,supra-ignimbrite lahar相に特徴付けられる堆積構造を顕著に反映している。また,これを覆う止別軽石層の板状の層理も相当する深度のGPR断面に反映されていると解釈する。とくに,アンテナ250Mhzを用いた場合,チャネルの形状や斜交層理のより細かい構造がGPR断面に現れた。このことからも,ラハール堆積物のGPR探査は,堆積物の分布や,チャネルの形態,古流向解析にも使われる堆積構造の把握に,極めて有用であることが示された。
|