研究課題/領域番号 |
24710204
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
佐野 哲也 山梨大学, 医学工学総合研究部, 助教 (90533589)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 南岸低気圧 / 層状性降水システム / ブライトバンド / X-バンドマルチパラメータレーダー / 降雪 / 降雨 |
研究概要 |
冬季に太平洋沿岸に豪雪をもたらす冬季の南岸低気圧に伴う層状性降水システム内に混在する、降雪域、降雨域そして両者が混在する遷移域を簡潔に判別する手法の提案を目的として、本年度は以下の研究等がなされた。 駿河湾からその沿岸、そして山岳に囲まれた内陸で標高のやや高い甲府盆地を覆う南岸低気圧に伴う層状性降水システムを捉えるため、山梨大学による甲府盆地内、また国土交通省による駿河湾沿岸でのX-バンドマルチパラメータレーダー(X-MPR)観測のデータ取得とその解析ツールの整備を行った。 2012年12月から2013年2月にかけて、解析領域を通過する南岸低気圧に伴う層状性降水システムがX-MPRにより数多く観測され、それらのデータの取得に成功した。主な事例について、気象庁気象官署の地上観測データから、層状性降水システムは、①駿河湾沿岸、甲府盆地ともに降雨(2012年12月30日)、②駿河湾沿岸で降雨、甲府盆地で降雪(2013年1月14日)、③駿河湾沿岸で降雨、甲府盆地で降雪から降雨への変化(2013年2月18日)、をもたらせていた。 X-MPRで観測された反射強度と偏波間相互相関の時間変化から、観測された降水システム中のブライトバンドの高度の時間変化を捉えることができた。その解析から、上述のそれぞれの事例について以下のことが示された。①では駿河湾から甲府盆地にかけてブライトバンドの高度は 2 ~ 3 kmを維持していた。②では駿河湾上で高度 1 km付近にブライトバンドが見られ、甲府盆地では見られなかった。③では、駿河湾上ではブライトバンドは高度 1.5 ~ 2.5 kmを維持し、甲府盆地上では高度 0.5 kmから高度 2.5 kmまで時間の経過と共に上昇した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年12月から2013年2月にかけて、南岸低気圧に伴う層状性降水システムの観測とそのデータ取得が狙い通りに行え、本研究の遂行に十分な資料が得られた。また、解析も徐々に進められ、異なる地上気象をもたらす層状性降水システムの構造の違いも示されている。 データの取得時期や解析期間、学術会議への参加の締切期日の兼ね合いから本年度中の成果公表は難しかったが、公表の準備は進められている。 しかしながら、気流に関する解析ツールの作成がやや遅れていることから、これの推進と雲解像モデルを用いた実験が今後の研究において重要となる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに取得したX-MPRやその他気象データから、ブライトバンドの高度の変動に着目して層状性降水システムの構造を考察する。また雲解像モデルによる層状性降水システムの再現実験を試み、融解層の再現性と問題点を考察する。解析結果については、随時学術会議等で発表していく。 以上の結果を踏まえ、層状性降水システムの降雪域、降雨域そして両者が混在する遷移域の簡潔な判別の可能性を考察し、その手法の提案に結びつける。
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次年度の研究費の使用計画 |
・当該研究費が生じた状況 本研究で使用している山梨大学レーダー本体と関連する機器等の保守について、大きなトラブルが生じなかったこと、また一部の保守について他の経費にて対応が行われたことにより、予算額よりも安価にて保守対応が行えたことにより残額が生じた。 ・翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画 今年度から山梨大学レーダー本体と関連する機器等の保守は、本研究が主体となって行うため、それに利用する計画である。また、解析に利用する気象資料の購入、学術雑誌や会議への投稿・参加費、そして研究発表や情報収集のための出張旅費に利用する計画である。
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