研究課題/領域番号 |
24710210
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研究機関 | 福井工業高等専門学校 |
研究代表者 |
辻野 和彦 福井工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (10321431)
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キーワード | 防災マップ / VR動画 / 斜面崩壊 / 土石流 / 地すべり / UAV / DSM |
研究概要 |
本研究の目的は,(1)衛星画像や各種の地理空間情報を用いて国内における地震・豪雨災害の履歴を整理し,被害予測を行うGIS (地理情報システム)を構築すること,(2)3D VR(バーチャルリアリティ)ソフトウェアを用いて視覚的に判り易い被害状況のシミュレーション動画を作成し,地域住民とのワークショップを通して住民の迅速な避難行動(「いつ」,「どこに」,「どうやって」逃げるか)に寄与するシステムを構築すること,(3)防災マップサーバーを導入し,福井県内において防災マップを作製することである. 平成24年度の成果(2008年岩手宮城内陸地震により発生した地すべり性崩壊のInSAR処理によるDEM(数値標高モデル)生成,2010年広島豪雨災害によるALOS PALSARデータを用いた土石流の検出)に加え,平成25年度は,UAV(空撮用マルチコプター)を用いて2013年台風18号により福井県越前町に発生した斜面崩壊箇所のDSM(数値表面モデル)生成を試みた.その結果,7.5cmメッシュの細密なDSMを生成することができた.また,平成25年12月に福井県より土砂災害特別警戒区域および警戒区域(レッドゾーンおよびイエローゾーン)のオープンデータが公開された.これらのデータを正解とし,国土地理院発行の10mメッシュDEMを用いて空間分析を行い,土石流危険箇所の抽出を試みた.今後,砂防施設の有無を確認し,特別警戒区域および警戒区域の漏れが無いかを検証したい.なお,(2)(3)については,平成25年度写真測量学会秋季学術講演会においてこれまでの研究成果の口頭発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
住民の迅速な避難行動(「いつ」,「どこに」,「どうやって」逃げるか)を検討する上では,土砂災害をハザードとして危険箇所をしっかりと示す必要がある.平成25年度は,UAV(空撮用マルチコプター)を用いて2013年台風18号により福井県越前町に発生した斜面崩壊箇所のDSM生成を行うことができた.地盤高の現況を現地で精密に観測することは,地形形状の変化を踏まえた斜面安定の再計算に用いることができる.また,崩壊土量を考慮した二次的な被害拡大の予測にもつながる.昨年度は,Lバンドデータを用いたInSAR解析だけでなく,Xバンドの高分解能SARデータのInSAR解析により斜面崩壊箇所のDSMを作成することができた.したがって,衛星画像解析,空撮画像による解析の両者において危険箇所の現況を示すことができた. また,国土地理院の10mメッシュDEMを用いてGISの空間分析(流域分析)を行うことにより土石流危険箇所の抽出も行うことができた.したがって,概ね申請書に記載した研究計画通りに研究を進めることができている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究についても研究計画通りに実施する.避難体制を検討するという研究の目的を達成するために,中山間地集落内の斜面について,地形,地質,降水量を考慮した客観的な危険度評価を行う予定である.危険度評価手法としては,力学モデルに基づき斜面崩壊危険度を定量的に求める方法を考える必要がある.一方,より多くの斜面の安定性を評価するためには簡易な方法が必要である.そこで本研究では,危険度評価の力学モデルとして地下水位がある無限長斜面を考え,斜面の力学的安定性を表す安全率Fを用いて危険度を評価する.一方,避難体制を検討するためには上流渓流斜面での表層斜面崩壊により発生した土砂の流下,堆積を考慮したシミュレーションを行う.愛知県新城市における土石流のVR動画に加え,福井県の中山間地集落を対象とした土石流VR動画の作成を行う予定である.ここで得られた成果を,福井県鯖江市の防災リーダー養成講座のワークショップで紹介し,防災マップづくりを通して住民の迅速な避難行動に寄与して行きたい.さらに,これらの成果は,土木学会等で発表を行う.
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