本研究では,(1)衛星画像や各種の地理空間情報を用いて国内における地震・豪雨災害の履歴を整理し,被害予測を行う地理情報システム(GIS)を構築し,(2)3Dバーチャルリアリティ(VR)ソフトウェアを用いて,視覚的に判り易い被害状況のシミュレーション動画を作成し,さらに,(3)地域の防災力向上に資するため,防災マップ作成講座を実施した. (1)の履歴の整理では,岩手宮城内陸地震によって発生した斜面崩壊について,ALOS PALSAR画像を用いたInSAR処理を行い崩壊箇所のDEMを生成した.また,広島県庄原市の土石流災害について,多偏波(ポラリメトリック)のSAR画像解析による斜面崩壊検出法を検討した.その結果,国土地理院の基盤地図情報(10mメッシュDEM)とInSAR-DEMとの比較によって崩壊土砂量が把握できることが示された.また,ポラリメメトリックSARの画像解析では,500平方メートル以上の崩壊箇所であれば,崩壊箇所の検出が可能であることを示した.さらに,平成25年台風18号によって発生した越前市の斜面崩壊について,UAVを用いた調査を行い,空撮画像からDSMの生成を行った.その結果,UAVは天候(風雨)の影響は受けるものの7.5cmメッシュの高精度のDSMを生成できることが示された.(2)の土石流VR動画については,愛知県新城市における土石流のシミュレーション動画を作成した.表層の崩壊,水位の上昇,土砂ダムの決壊など,土石流の発生機構について判り易い動画を作成することができた.(3)の防災マップ作成講座については,地域住民に対する防災リーダー養成講座だけでなく,平成26年度には,福井高専地域連携テクノセンター主催による防災士養成講座の中で,研究代表者が土砂災害に関する講師を担当した.研究の全体を通して,地域の防災力向上に資する研究活動を行うことができた.
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