研究実績の概要 |
1.アジア域における洪水氾濫リスクの将来予測:MRI-AGCM3SのSRES A1Bシナリオに基づいて、現在気候(1980-2004 年)と将来気候(2075-2099年)という二つの条件下で、影響人口を含めたアジア諸国の河川氾濫リスクを比較した。アジア諸国中、調査可能な15カ国の脆弱性指標を調べ、洪水と相関性が高い指標(高齢者人口率, 栄養失調率, 都市化率, 腐敗認識指数, 早期警報)を選定し、評価した結果、バングラデシュ人民共和国の危険度が最も高いことが明らかになった。また、将来の人口増減率を考慮した影響人口は15カ国全体で3.4%(約3千5百万人)増加し、将来の影響人口全体に占める割合は中国が最も高いが、総人口比率で見るとバングラデシュの増加率(38.5%)が最も高いこともわかった。 2.バングラデシュの将来変化予測:主に影響人口および農業被害の変化予測を目的として、近年最大規模であった2007年大洪水(10年確率洪水)を洪水浸水深モデル(FID)で再現した。また、実証データを求めるため、2012、2013と2014年に深刻な農業被害があったブラマプトラ川沿いの代表地区で、2年間にわたり同時期に現地水害調査を行い、稲作被害曲線を試作した。それを基に格子ごとの人口急増地域の氾濫リスク、氾濫域内の稲作被害分布、水施設(堤防)を考慮した新たなリスク評価を検討した。その結果、バングラデシュでは、堤防設置により、現在気候下で35%、将来気候下で34%、リスクを軽減できることがわかった。 3.ウェブGISシステム試作:ArcGIS-Onlineを使って、アジア域主要河川の浸水ポテンシャルモデルや検証・分析結果の一部を地図上にわかりやすく可視化することを試みた。今後、クラウドArcGIS-Onlineを用いて、GIS データをアップロードして簡単に情報を共有できる洪水リスク管理支援システムに発展させていく。
|