研究課題/領域番号 |
24710214
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
島田 友裕 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (10535230)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 代謝制御 / ゲノム転写制御 / 転写因子CRP / アセチル化 |
研究概要 |
本研究は炭素源代謝のグローバルレギュレーターであるCRPのアセチル化による支配下プロモーター群の使い分け機構の解析、およびゲノム包括転写制御機構の解析を行い、CRPの新規転写制御機構による代謝制御の全体像の理解を目指して実施しているものである。今年度はその一環としてCRPによるリボソーム活性調節因子であるRMF(ribosome modulation factor)の転写制御機構を解析した。その結果、RMFは転写レベルでCRPによって活性化されていることが分かり、実際にCRP欠損株において100Sリボソームの形成が阻害されていることを観察した。これらの結果から、翻訳活性が炭素源代謝活性によって調節される機構が存在する事を明らかにした。この結果は以下の論文で報告した。 Shimada, T. et al. Regulation of the rmf gene encoding ribosome modulation factor in Escherichia coli: Involvement of cAMP receptor protein. Journal of Bacteriology. (2013) in press. また、CRPのアセチル化レベルの変動を観察するために、アセチル化ターゲット部位候補のリジン残基をアラニンに置換した発現ベクターを構築した。そしてそのベクターをcrp欠損株に形質転換し、細胞の生育を観察したところ、あるリジン残基をアラニン残基に置換したCRPは、特定の糖を単一炭素源とした培地において生育を著しく遅延させることが分かった。これらの結果からCRPのアセチル化が細胞の生育にとって重要な役割を持っていることが示唆され、そのアセチル化部位が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はCRPのアセチル化部位の特定、およびアセチル化レベルの検証を行い、それらに基づき支配下遺伝子群の制御の検証および制御様式の解明を行うものである。平成24年度は以下のことを行った。 ・変異型CRPを発現させるための発現ベクターを構築し、アセチル化部位に変異を導入したCRPを複数クローニングした。実際にそれら変異型CRPの発現をたんぱく質レベルで確認した。 ・アセチル化部位変異型CRPを大腸菌crp欠損株に形質転換し、機能の相補性を検証した。その結果、ある特定の変異型CRPは野生型CRPを完全には相補できなかったため、その変異導入部位がCRPの機能にとって重要であることが示唆された。またアセチル化酵素および脱アセチル化酵素の欠損株においてある特定の変異型CRPでは生育が悪くなった。これらの結果から、CRPのアセチル化標的部位が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後はCRPのアセチル化レベルの同定、および実際に支配下遺伝子群への転写レベルへ影響を与えるかどうかを検証する予定である。 ・CRPアセチル化レベルの同定を行うために、野生型および変異型CRPを生育環境に応じて精製し、アセチル化リジン抗体を用いてそのアセチル化レベルを検証する。 ・支配下遺伝子群への転写レベルの制御への影響を検証するために、各変異型CRPを導入した大腸菌細胞を用いて支配下遺伝子群の細胞内RNA量を定量する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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