研究課題/領域番号 |
24710214
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
島田 友裕 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (10535230)
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キーワード | 代謝制御 / ゲノム転写制御 / 転写因子CRP / アセチル化 |
研究概要 |
本研究は炭素源代謝のグローバルレギュレーターであるCRPのアセチル化による支配下プロモーター群の使い分け機構の解析、およびゲノム包括転写制御機構の解析を行い、CRPの新規転写制御機構による代謝制御の全体像の理解を目指して実施しているものである。 初年度は炭素源代謝の遷移によってCRPのアセチル化レベルが変動することを観察し、アセチル化部位のリジン残基を置換したCRPを作製し、生育に与える影響を観察した。CRP支配下プロモーターにはCRPとRNA polymeraseの相互作用部位の違いによってClass I promoterとClass II promoterに分類されているが、同定したアセチル化部位がClass II特異的に重要な部位と一致していたため、二年度は実際にClass IとClass II promoterの活性を測定した。過去の報告に基づき、Class I promoterとしてlac promoterと人工変異を導入したmelRI promoterの活性を、Class II promoterとしてgalP1と人工変異を導入したmelRII promoterの活性を測定した。その結果、Class I promoterとClass II promoterで解糖系依存代謝時とTCA回路依存代謝時でプロモーター活性の傾向が異なっていた。CRPのアセチル化状態も細胞の解糖系依存代謝とTCA回路依存代謝の切り替わりによって変化するため、CRPのアセチル化状態によってClass I promoterとClass II promoterが使い分けられている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はCRPのアセチル化部位の特定、およびアセチル化レベルの検証を行い、それらに基づき支配下遺伝子群の制御の検証および制御様式の解明を行うものである。平成24年度はCRPのアセチル化部位の特定およびアセチル化レベルの観察を行った。平成25年度は支配下遺伝子群のプロモーターアッセイベクターに挿入し、実際にその活性をCRPのアセチル化レベルの変動に応じて測定した。その結果、CRPのアセチル化部位とRNAポリメラーゼの相互作用部位に依存したプロモーターと非依存プロモーターで活性が異なることが観察された。このことから、CRPのアセチル化によって支配化遺伝子群のプロモーターを使い分けていることが示唆され、当初の仮説を支持する結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度はこれまでに観察してきたCRPのアセチル化レベルの変動とCRP依存プロモーターの活性変化が実際に相関しているかどうかを検証するために以下のことを検証する予定である。 ・アセチル化部位に変異を導入したCRP変異株を作製し、CRP依存プロモーターの活性を測定する。 ・プロモーターの活性測定に加え、細胞内のmRNAの定量を行い、実際に転写産物も同様に生産されているかどうかを観察する。
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