研究課題/領域番号 |
24710229
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
加藤 太陽 島根大学, 医学部, 助教 (40548418)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 転写 / クロマチン / Spt6 / Iws1 / RNAポリメラーゼII / セントロメア / ヘテロクロマチン |
研究概要 |
本研究はSpt6とIws1を中心とした「転写と共役したクロマチン制御」の分子機構を理解することを目的としており、平成24年度においては、これらの分子と関連する因子の探索を行った。結果として多数の候補因子を得る事ができ、その機能解析を進めているところである。例えば、Spt6と直接相互作用するRNAポリメラーゼII(Pol2: 転写を行う酵素)の変異をもつ細胞がきわめて特徴的な表現型を示すことが分かった。野生型細胞のセントロメアと変異型細胞のセントロメアを識別できるよう遺伝的改変を加え、野生型細胞と変異型細胞との掛け合わせによって野生型細胞由来のセントロメアとPol2の変異を併せ持つ子孫細胞を効率的に単離する仕組みをつくった。この方法によって得られた子孫細胞では、Pol2の変異の影響により、正常だったセントロメアヘテロクロマチンの構造が「徐々に」失われて行く様子が伺えた。偶発的に起きるヘテロクロマチンの崩壊を修復できないためにこのような表現型が見られるのではないかと考えられる。この変異はもともとRNAiに欠陥をもたらすものとして単離されたものであるが、ヘテロクロマチン構造が失われた結果としてRNAiに欠陥が生じる可能性も排除できない。偶発的なクロマチンアイデンティティの消失を防ぐメカニズム、そして万が一の場合に修復するメカニズムがあると考えられ、それを分子レベルで理解するためのツールとして、この現象を利用できると考えている。本研究で同定した他の因子との関係も考慮しなければならない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
相互作用因子の単離後に計画していた条件変異体の作成と、PTGSへの関与の検討を実施できていないため。
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今後の研究の推進方策 |
24年度中に作成するに至らなかった条件変異体の作成を行い、PTGSへの関与も検討する。また、計画書にある通り、相互作用因子のゲノム上での分布を、クロマチン免疫沈降産物の高速シーケンス解析(ChIP-seq )で解析する。並行して当該因子の変異株における遺伝子発現のマイクロアレイ解析を行い、spt6とiws1の変異株の解析結果との比較解析を行う。必要に応じてタンパク質のドメイン解析を行い、その重要性を検討する。同定している相互作用因子のうちPTGSに関与するものについては、エクソソームとの機能的な関係を調査する。また、24年度に見いだしたPol2変異の特別な表現型についても、その表現型が見られる仕組みを様々な視点から考察し、転写と共役したクロマチン制御の理解につなげたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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