研究課題
真菌類は生理活性を有する多様な二次代謝物質を産生する。その生合成経路は大きくポリケチド(PKS)、非リボソームペプチド(NRPS)、テルペノイドの系統に分かれるが、物質によって生産する培養条件が大きく異なり、また生産性も安定しないことが多い。したがって、望む二次代謝物質の産生に適した培養系をデザインすることは研究上意義が高いが、これまでの多くの研究にもかかわらず、総合的な知見は現在のところほとんど存在せず、研究者の経験と勘に任せられている部分が大きい。本研究では、Aspergillus oryzaeについて様々な培養条件下で取得した190を超える大規模遺伝子発現(アレイ)情報を用いて、個々の二次代謝物質の産生に適した培養系をデザインすることを目的としている。昨年度までに、大規模アレイ情報の解析から、二次代謝経路は大きく3種類に分けることができ、各々に応じて活性化する培養条件の分類が示唆された。その結果に基いて本年度は、3つの二次代謝経路グループそれぞれを代表する培養条件をデザインし、その条件下での遺伝子発現と代謝物の変動を、A. oryzaeと系統樹的には非常に近い種ながら二次代謝物質をより産生するAspergillus flavusで確認した。具体的には、PKSなどの炭化水素系、NRPS系、およびリボソームペプチド等のアミノ酸系(NRPS系も含む)がそれぞれ動きやすいと考えられる、炭素源を多く含む条件、炭素源が少なくかつ生存に厳しい条件、および固体培地様条件の3つである。なお今回、テルペノイド系が動きやすいグループは特定されなかった。結果、A. flavusにおいてもおよそ想定通りの代謝経路の動きと代謝物産生が観察され、PKS, NRPS, リボソームペプチドのそれぞれに適した産生培地の基盤的知見が得られたと考えている。
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