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2012 年度 実施状況報告書

ポストゲノム解析の統合による、植物液胞新規代謝機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24710235
研究種目

若手研究(B)

研究機関神戸大学

研究代表者

大西 美輪  神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10437501)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード液胞 / ニチニチソウ / 二次代謝 / ポストゲノム解析
研究概要

本研究では、植物液胞の新規機能の解明を目指し、特にニチニチソウを材料に、液胞に蓄積していると考えられる薬用成分、アルカロイド等の二次代謝物質の生合成に関わる酵素や基質の同定を、メタボロミクス、プロテオミクスの手法を用いて進めている。
当該年度当初は、ニチニチソウ培養細胞の液胞単離系を用いて、解析を進めていたが、用いた培養細胞系統において、アルカロイドの生合成能が安定しないことが判明した。そこでニチニチソウ植物体から培養細胞の再構築を行なった。また、これまでに報告されたアルカロイド生合成に関する酵素の発現解析から、ニチニチソウの葉において、アルカロイドはいくつか異なる組織間を移動しながら、さらに細胞内のオルガネラ間の移動も経ながら合成されていることが推測される。最終的に合成されたアルカロイドは、異形細胞と呼ばれる特殊な細胞に蓄積すると考えられており、その異形細胞はUV照射により、蛍光を発する。そこで、我々は、その蛍光と異形細胞特有の細胞サイズや細胞内構造といった特徴を利用し、蛍光セルソーター(FACS:(Fluorescence activated cell sorter))を用いて、異形細胞を精度よく単離することに成功した。
現在、異形細胞の単離方法がほぼ確立し、再度、ニチニチソウ植物体、培養細胞、異形細胞を用いたメタボローム解析とプロテオーム解析を進めている。実験材料の再構築や、解析装置の安定化等に時間を要したが、アルカロイドの生合成や蓄積に重要な働きをしていると考えられる異形細胞の単離方法を確立できたことは、今後、ニチニチソウのアルカロイド生合成機構を解明する上で、大きな前進である。また異形細胞においても、液胞にアルカロイドが蓄積していると考えられ、その特殊な細胞の液胞機能を探ることは、新規液胞機能の解明が期待できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度から、ニチニチソウ培養細胞の液胞単離系を用いて、解析を進めていたが、用いた培養細胞系統において、アルカロイドの生合成能が安定しないため、ニチニチソウ培養細胞の再構築、植物体においてアルカロイド生合成や蓄積に働く異形細胞の単離方法の確立を行う必要が生じた。
現在、異形細胞の単離方法がほぼ確立したので、再度、メタボローム解析とプロテオーム解析を進めている。
メタボローム解析については、質量顕微鏡や単一細胞メタボロームといった新技術を利用できる機会もあり、さまざまなアプローチから、ニチニチソウ細胞および、液胞に蓄積している代謝物質を分析し、品種間や成育時期による違いなども確認できている。
実験材料の再構築や、解析装置の安定化等に予想以上に時間を要し、当初予定していた二次代謝産物生合成因子の探索には至っていないが、データベース構築のための情報も蓄積しつつ、ニチニチソウの二次代謝生合成を理解する上では、異形細胞単離という、より良い実験材料の獲得に成功したと言えるので、おおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

1,単離方法が確立した異形細胞や培養細胞の再構築系を用いて、また、植物体葉組織を用いたメタボローム解析、プロテオーム解析の情報と照らし合わせながら、二次代謝産物生合成因子の探索を行う。
2,培養細胞の再構築系に関しては、形質転換方法を確立して、生合成因子の過剰発現体やノックダウン株を作製し、二次代謝産物の蓄積変化などを調べる。
3,安定同位体を用いて、細胞間の移動やオルガネラ間の移動を経ていると考えられる生合成経路の追跡を行う。この解析には、大阪大学升島研究室の協力も得ながら、単一細胞のメタボローム解析としても進める予定である。
4,アルカロイドの蓄積に働いている異形細胞からの液胞の単離も進め、異形細胞における液胞の役割を解明していく。

次年度の研究費の使用計画

単離方法が確立した異形細胞や培養細胞の再構築系を用い、二次代謝産物生合成因子の探索に用いる受託解析費として、また、二次代謝生合成経路の追跡に用いる安定同位体の購入費として、次年度に使用予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Sudden collapse of vacuoles in Saintpaulia sp. palisade cells induced by a rapid temperature decrease.2013

    • 著者名/発表者名
      Kadohama N, Goh T, Ohnishi M, Fukaki H, Mimura T, Suzuki Y.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 8(2) ページ: e57259

    • DOI

      10.1371

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ion gradients in xylem exudate and guttation fluid related to tissue ion levels along primary leaves of barley2013

    • 著者名/発表者名
      Nagai M, Ohnishi M, Uehara T, Yamagami M, Miura E, Kamakura M, Kitamura A, Sakaguchi SI, Sakamoto W, Shimmen T, Fukaki H, Reid RJ, Furukawa A, Mimura T.
    • 雑誌名

      Plant, Cell & Environment

      巻: 10.1111/pce.12090 ページ: 10.1111

    • DOI

      10.1111/pce.12090

    • 査読あり
  • [学会発表] 植物液胞のポストゲノム解析

    • 著者名/発表者名
      大西美輪
    • 学会等名
      日本植物学会
    • 発表場所
      兵庫県立大学
  • [学会発表] ニチニチソウ細胞における二次代謝産物合成機構の解析

    • 著者名/発表者名
      山本浩太郎
    • 学会等名
      日本植物学会
    • 発表場所
      兵庫県立大学
  • [学会発表] ニチニチソウはどうやって抗がん剤を作るのか?:二次代謝における細胞間/細胞内調節

    • 著者名/発表者名
      山本浩太郎
    • 学会等名
      第3回サイエンスフロンティア研究発表会
    • 発表場所
      神戸大学
  • [学会発表] 二次代謝の理解から応用研究へ

    • 著者名/発表者名
      山本浩太郎
    • 学会等名
      若手フロンティア研究会2012
    • 発表場所
      神戸大学
  • [学会発表] ニチニチソウ細胞における二次代謝機能の解析

    • 著者名/発表者名
      山本浩太郎
    • 学会等名
      日本植物生理学会
    • 発表場所
      岡山大学

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公開日: 2014-07-24  

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