これまでに亜硝酸菌Nitrosomonas europaea由来NE1434酵素がp-aminobenzoate(pABA)合成に関与することを明らかにしている。しかしその基質を同定できていないため探索した。 既知pABA生合成経路ではシキミ酸経路中間体であるコリスミ酸が基質となる。そこでpABA要求大腸菌よりシキミ酸経路遺伝子(aroB、-C、-D)破壊株を構築し相補試験を行った。その結果、NE1434遺伝子を導入した破壊株はすべて増殖した。この結果よりコリスミ酸およびシキミ酸経路中間体を基質としないことがわかった。これは既知経路とは全く異なる新規pABA生合成経路の存在を意味する。 このようにNE1434酵素の基質を予想することが困難なため、pABA要求大腸菌ゲノムへNE1434遺伝子を込み込んだpABA原栄養体を構築、その株よりpABA要求株を取得し、その情報に基づき基質を予想する戦略を考案した。まずはトランスポゾンを用いたpABA要求株の取得を試みた。しかし目的株を得ることはできなかった。次に変異原物質を用いたpABA要求株の取得を試みた。その結果、21の要求株を得ることに成功した。NE1434遺伝子変異株を除去するため、NE1434発現プラスミドでpABA要求性が相補されるか検証した。その結果1株において相補が確認できたため排除した。他の20株に対し大腸菌ゲノムDNAライブラリーを組み込み、相補遺伝子情報より基質供給経路の解明を試みた。その結果、すべての株がdihydropteroate synthase をコードするfolP遺伝子(pABA+dihydropterin-PP→dihydropteroate)で相補されていた。これはpABAを基質とする。よってNE1434酵素の基質同定には至らなかった。
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