研究課題
人体に有益な作用を有する小分子化合物の実用化には標的の同定や作用機構の確認が必要不可欠になっている。しかしながら標的分子の同定は、特に非共有結合により相互作用する小分子化合物の場合、困難な場合が多い。そこで本研究では非共有結合する小分子の標的分子解明に有効で、かつ化合物側に低侵襲な方法論の開発を行う。個々の化合物で無限に変わりうる化学構造を誘導化するのではなく、小分子化合物・標的分子複合体の検出方法を工夫することとした。抗体は化合物の無限の構造バラエティに適応しうる分子であり、化合物の種々部分構造を認識できる可能性を有している。そこで、化合物の様々な構造要素を認識するポリクローナル抗体プールを用意することで、小分子化合物・標的分子複合体を検出・回収できると考えられる。まずはポリクローナル抗体の調製を行った。小分子化合物に対する抗体を作成する上で問題となるのは、その抗原性の低さである。しかし単純な小分子化合物自体で免疫応答を引き起こさなくても、タンパク質と結合すると免疫応答を引き起こすようになることが知られている。そこでモデル化合物であるRhizoxinをKLHタンパク質とconjugateし、ウサギポリクローナル抗体調製を検討した。複数のウサギに異なる抗原濃度と免疫回数で免疫し、RhizoxinとBSAのconjugateを用いて血清の抗体価を適宜モニターした。得られた血清の反応性を種々抗原を用いてELISA法で評価し、Rhizoxin部分を認識すると考えられるポリクローナル抗体を得た。またKLHを認識する抗体をできるだけ除去する検討も行った。続いて、結合標的分子検出の検討を行った。条件検討のため、まずは共有結合するモデル化合物を用いて検討を行った。モデル化合物存在下で検出されるバンドがあったため、今後は本条件を基にRhizoxinと結合するタンパク質検出を検討する。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画では、平成24年度に抗Rhizoxinポリクローナル抗体の調製と結合標的分子の同定を行うことになっている。Rhizoxinを認識するポリクローナル抗体は既に得られている。結合標的分子の同定には至っていないが、その条件検討のためにまずはより簡便な別の分子での検討を優先したためである。
まずは抗Rhizoxinポリクローナル抗体を用いた結合標的分子の同定を検討する。すなわち抗小分子抗体・小分子・標的分子の三者複合体の検出を行う。検出が難しい場合は抗体の親和性が低いことが一因と考えられるため、ファージディスプレイ法によるアフィニティマチュレーションを行うか、抗体と標的分子のクロスリンクにより親和性の低さを補う。続いて、得られた抗小分子抗体・小分子・標的分子の三者複合体を利用した結合様式の解析を行う。
該当なし
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
ACS Chemical Biology
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1021/cb300641h
British Journal of Cancer
巻: 106 ページ: 1779
10.1038/bjc.2012.176