本研究は、小胞体ストレス応答に重要なセンサータンパク質の一つであるPERKタンパク質およびPERKと相互作用するBiPタンパク質を対象として、構造生物学的見地から機能発現機構を解明することを目的としている。昨年度は大腸菌発現系において不溶性画分に回収されるPERKタンパク質の小胞体内腔ドメイン(LD)を高圧処理によって巻き戻し、BiPとの相互作用を支持する結果を得た。本年度はこれと並行して、可溶性タンパク質を効率的に調整するための検討を行った。PERK LDは小胞体内腔に位置するため、ジスルフィド結合形成が予想される。そこで、大腸菌細胞質内での適切なジスルフィド結合形成を促進するチオレドキシン融合タグと宿主大腸菌Rosetta-gami2(DE3) を用いた発現系を構築した。これにより、可溶性画分にPERK LDタンパク質を回収することに成功した。本発現系はPERKとBiPの相互作用解析においてPERK変異体を調製する際に活用できる。可溶性画分のPERK LDタンパク質は各種カラムクロマトグラフィーによって精製し、単独およびBiPと混合した状態で結晶化条件を探索しているが、現在のところ結晶は得られていない。PERK LDタンパク質は高濃度溶液で容易に凝集し沈殿を形成することから、良質な結晶を得るために、安定性を向上させる緩衝液条件の検討およびドメイン長を変えるなどの発現コンストラクトの改変が必要であると考え、これらの実験を実施している。
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