研究課題/領域番号 |
24710246
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
森田 洋行 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (20416663)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ポリフェノール / 酵素工学 / 結晶構造解析 |
研究概要 |
キダチアロエ由来オクタケタイド合成酵素(OKS)野生型とそのN222G変異酵素は、それぞれ8分子あるいは10分子のマロニルCoAを直接縮合して芳香族ポリケタイドを生成する。今回、さらなる非天然型新規化合物の生産を目指し、既に取得済みの両酵素の結晶構造と各々の酵素の反応中間体とのドッキングシミュレーション解析、および、12分子のマロニルCoAを直接縮合して芳香族ポリケタイドを生成するOKSのF66L/N222G変異酵素の結晶構造の取得を試みた。 まず、CNSプログラムを用いて、OKS野生型とそのN222G変異型の反応中間体の静的適正配置及び酵素反応の進行に伴う動的変化を解析したところ、両酵素の活性中心キャビティの側面を形成するT204も、OKSとそのN222G変異酵素のマロニルCoA縮合回数と生成物特異性に重要な役割を担っている可能性が示された。現在、この解析に基づき、OKSとそのN222G変異酵素のT204部位への変異導入実験と酵素反応生成物の解析が進行中である。 一方、12分子のマロニルCoAを直接縮合して芳香族ポリケタイドを生成するOKSのF66L/N222G変異酵素について結晶化を行ったところ、サイズは小さいものの、OKS野生型と同様の条件で結晶が得られることが確認された。そこで本結晶について放射光施設でX線回折データの取得を行った結果、3.1Åの分解能で結晶構造の取得に成功した。現在、この結晶構造情報に基づく変異導入実験と、高分解能の結晶構造の取得に向けた本変異酵素の結晶化条件の最適下が進行中である。本変異酵素のX線結晶構造の取得により、さらに合理的なOKS酵素の触媒機能の拡張と非天然型新規化合物の創出が実現するものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度計画においては、OKS酵素の結晶構造情報と、各々の酵素の反応中間体と結晶構造とのドッキングシミュレーションによる酵素反応メカニズムの解析とそれに基づく変異導入実験までを達成目標としていた。 計算科学による酵素反応メカニズムの解析は順調に進み変異導入実験まで着手することができた点においては、当初の計画通り研究が進行していると判断している。また、OKS F66L/N222G変異酵素の結晶構造解析においても分解能は高くはなく精度は低いものの結晶構造の取得に成功しており、酵素への変異導入を行う点においては問題無い程度に解析されていることから、この点においても本研究課題は計画通りに進展していると考えている。 一方、変異導入実験は進展しているものの、申請者はH24年4月に研究室をあらたに立ち上げたため分析機器の稼働に若干の時間を要し、酵素反応生成物の解析が研究計画よりもやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
稼働が遅れ気味であった分析機器も現在では順調に作動しており、やや遅れ気味の酵素反応生成物の解析を早急に進める。次年度の研究計画であるヘテロ芳香環を導入した人工基質の合成については現在、着手しているところであり、今後、その酵素反応生成物の解析とともに、これらの基質アナログとの複合体結晶構造解析に着手し、酵素反応機構の解析とさらなる酵素触媒機能の拡張に取り組む。また、H24年度に実施した酵素反応メカニズムの解析についても再度見直しを図り、さらなる酵素触媒機能の拡張と非天然型新規化合物の創出に取り組む予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請者はH24年4月に研究室をあらたに立ち上げたため分析機器の稼働に若干の時間を要し、H24年度に計画していた酵素反応生成物の解析が研究計画よりもやや遅れている。そのため、その実施に必要としてた経費のうち、152,519円が次年度に繰越となった。次年度においては、その繰越研究費は、酵素基質の合成、酵素反応生成物の解析で用いる有機試薬、および、変異酵素の作成と酵素精製に使用する生化学試薬やガラス・プラスチック器具など、H24年度の計画に沿った消耗品の購入に研究費を使用する予定である。
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