研究実績の概要 |
本研究では、スピロリドC (SPX C)の全合成を達成することで完全立体構造を決定することを目的とした。昨年度までに(1)SPX Cを特徴づけるスピロイミン部分(A,E環)の選択的合成法の確立を目指し、モデル基質ではあるが立体選択的なDiels-Alder反応の開発に成功した。また、(2)もう一方の鍵ユニットである6,5,5-ビススピロアセタール部分については、架橋リンカー制御による高立体選択的な構築に成功していた。 本年度はまず(1)について、実際のジエノフィルを用いて選択的Diels-Alder反応を検討するために、不斉ジメチル基を有するα-メチレン-γ-ラクタムの合成を実施した。出発原料の(s)-シトロネロールを酸化し、キラル補助基を導入後、α位の立体選択的メチル化を行うことで、不斉ジメチル構造を構築した。続いて6段階でアミノカルボン酸とし、シリカゲル共存下での環化反応によりラクタム構造を構築後、α位のメチレン化を行うことで目的とするジエノフィル基質の合成に成功した。 また、(2)については、スピロイミン部分との連結反応の基質への変換を行うために、再度大スケールで架橋環化前駆体を合成し、6,5,5-ビススピロアセタール化反応を行った。しかしながら、この際により詳細な構造解析を実施した結果、環化により得られた主生成物は望まない立体配置の異性体であることが判明した。本化合物に対して、酸触媒による異性化反応を試みたところ、副生成物として中央の5員環が芳香環化したフラン誘導体が得られることが明らかとなった。 現段階で望みのビススピロアセタール体を主生成物として得ていないが、反応生成物の構造解析および副生成物の精査により、目的の立体選択的変換を実現するための知見を蓄積しつつある。本戦略により合成する2つのユニットから環構造を順次構築することで全合成を実現できると考えている。
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