本研究では、心筋トロポニンの構造・ダイナミクスが、トロポニン分子内の心筋症病因変異によってどのような影響を受けるのかを解析した。まず、大腸菌発現系を用いて、野生型及び変異型(TnTのK247R変異)ヒト心筋トロポニンを精製した。これらの溶液試料に対して中性子散乱実験を行った結果、心筋症発症の原因となる変異導入によって、分子全体の柔らかさが約2倍になることが明らかとなった。また、ウシ心臓から精製した細いフィラメントのX線小角散乱実験を行い、トロポニンへのカルシウム結合に伴う構造変化を検出した。現在、変異トロポニンを組み込んだ細いフィラメントのX線小角散乱データの取得に取り組んでいる。
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