研究課題/領域番号 |
24710256
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
木本 路子 独立行政法人理化学研究所, 核酸合成生物学研究チーム, 研究員 (20415144)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 人工塩基対 / 転写 / 翻訳 / 無細胞タンパク質合成系 / tRNA / mRNA / T7 RNAポリメラーゼ |
研究概要 |
本研究は、申請者のグループで開発した複製と転写で機能する疎水性の人工塩基対を翻訳系にも拡張し、翻訳過程における疎水性人工塩基を含む新たなコドン-アンチコドンの相互作用を網羅的に解析・検証することで、翻訳系にも人工塩基対システムを拡張すること、最終的には人工塩基対をDNA中に組み込むことで遺伝暗号表を拡張した人工タンパク質合成系の開発することを目的とする。 当該年度は主に、疎水性人工塩基を組み込んだmRNAとtRNAを用いた無細胞タンパク質合成系において、FLAGタグを含むペプチドの合成により、人工塩基を組み込んだコドン-アンチコドンが機能するかどうかを簡便に解析する系の確立に取り組んだ。具体的には、これまでの報告例をもとに本研究に適した配列3種を選び、天然型塩基のみからなるmRNAまたは鋳型DNAを用いて、35Sまたは14C標識アミノ酸存在下でペプチド合成を行い、最も効率よく合成される配列とその翻訳条件を決定した。次に、疎水性人工塩基対Ds-Dsを組み込んだコドン-アンチコドンの組み合わせに焦点を絞り、人工塩基Dsを組み込んだ各種mRNA・tRNAをデザインし、mRNAとtRNAの鋳型DNAの調製を終え、T7転写により、Dsを特定の位置に組み込んだ各種mRNAの調製を行った。このDsを組み込んだmRNAを用いてペプチド合成を行った結果、人工塩基を組み込んだtRNAの非存在下ではペプチド合成は検出されないことを再現性よく確認でき、人工塩基を組み込んだtRNAを添加した場合でのペプチド合成の可否を簡便に検出できる系を確立することができた。 また本研究では、T7転写によるRNA調製において、疎水性人工塩基の取り込み選択性と効率が非常に重要となるため、長鎖RNAのための鋳型DNA調製方法、さらには疎水性人工塩基対に対して高い選択性を有するT7RNAポリメラーゼ変異体の探索にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度で予定していた2項目、①疎水性人工塩基を組み込んだtRNAとmRNAの調製、②無細胞タンパク質合成系でのペプチド合成によるタンパク質合成系での疎水性人工塩基を含むコドン-アンチコドン相互作用の解析のうち、①の人工塩基を組み込んだtRNAの調製、ならびに②の各種tRNA存在下での翻訳の解析、化学合成により調製した活性化アミノ酸をアミノアシル化リボザイムを利用してtRNAにチャージし、それら存在下での翻訳実施とその解析、が達成できなかった。理由として、今年度後半に、共同研究として、疎水性人工塩基対に対して高い選択性を有するT7RNAポリメラーゼ変異体の探索にも着手し始めたため、活性化アミノ酸の合成に着手できなかったことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度で既に、大腸菌の無細胞タンパク質合成系において、天然型塩基に依存したバックグラウンドが非常に低く、疎水性人工塩基Dsを組み込んだmRNAを用いて、疎水性人工塩基対を組み込んだコドン-アンチコドン相互作用を簡便に解析する系は確立できたため、まず、活性化アミノ酸の調製を来年度の最優先課題とし、申請者の研究室の化学合成研究者、もしくは外部との共同研究の形で取り組む。そして、今年度に達成できなかったDs-Ds塩基対を介したコドン-アンチコドンの相互作用を評価する予定である。さらには、今年度ですでに得られたペプチド合成での実験結果とその配列情報をもとに、 GFP等の機能性レポータータンパク質合成に向けたPCRによる鋳型DNAの調製と翻訳系のデザイン、Ds以外の疎水性人工塩基を組み込んだtRNAでの実験も並行して検討する。さらには、疎水性人工塩基対に対して高い選択性を有するT7RNAポリメラーゼ変異体の利用も研究内容に新たに加えていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が発生した理由は、H24年度の研究に遅れが生じたこと、また遅れるまでの部分の研究自身は順調に進んだことによる。この当該年度に生じた次年度使用額は、今年度に実施できなかった人工塩基を組み込んだtRNAの調製、活性化アミノ酸の調製、および活性化アミノ酸の各種tRNAへのアミノアシル化、またこれらを用いたペプチド合成とその産物の解析のための研究費として使用する予定である。また、これらの研究を効率よく進めるために、学会参加による情報収集の費用としても使用する予定である。
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