研究概要 |
本研究は、申請者のグループで開発した複製と転写で機能する疎水性の人工塩基対を翻訳系にも拡張し、翻訳過程における疎水性人工塩基を含む新たなコドン-アンチコドンの相互作用を網羅的に解析・検証することで、翻訳系にも人工塩基対システムを拡張すること、最終的には人工塩基対をDNA中に組み込むことで遺伝暗号表を拡張した人工タンパク質合成系を開発することを目的とする。 当該年度は、無細胞タンパク質合成系の中でも特定のtRNAとアミノ酸だけを加えてぺプチド合成を検証可能な系を有する研究室との共同研究をスタートさせた。天然型塩基のみかならなるコドンやアンチコドンとの認識も検証可能となったため、昨年度構築した配列を用いず、疎水性人工塩基対 Ds―DsおよびDs―Pa誘導体を組み込んだコドン-アンチコドンの組み合わせを、共同研究先の知見をもとにして、よりよい形で新たにデザイン・調製する計画に変更した。転写によるPaのRNA中への取り込み選択性については詳細を検証していたが、Dsについては隣接塩基の違いによる取り込み効率・選択性についてはこれまで調べていなかった。翻訳での選択性を正確に評価するためにも、RNA中へのDs取り込み選択性は必須なため、人工塩基両側の塩基を変えた合計16種類の配列について人工塩基導入選択性と取り込み効率を調べる実験を現在進めている。最終年度中にペプチド合成、そしてタンパク質合成の検証まで進めるができなかったが、本研究は今後も継続し、tRNA, mRNAの大量調製、ペプチド合成の検証を共同研究先と進めていく予定である。また、米国研究室との共同研究で同定したT7RNAポリメラーゼの変異体においても、転写おける疎水性人工塩基の取り込み効率について、上記転写系を利用して、検証を進める予定である。また、鋳型調製に必要な人工塩基対を含むPCRの精度改良も進めていく。
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