ファトスタチンに類似する構造をもつ化合物のSREBPに対する効果を網羅的に検討し、新規物質を得るために、FGH10019の類似化合物を240個収集した。さらに、FGH10019の化学構造のうち、高い活性に重要と考えられるスルホンアミド基、左側に位置する脂溶性部位を固定し、その他の官能基の特性を3D-ファーマコフォア検索した別骨格化合物を525万個の化合物データーベースから342個抽出・収集し、フォーカスドライブラリーを構築した。これら収集した化合物のSREBP活性化阻害効果を、レポータージーンアッセイによって評価した。その結果、これらの化合物の中からFGH10019に匹敵するSREBP活性化阻害効果を示す複数の別骨格化合物を得た。 さらに、ファトスタチンをリード骨格にして構築した上記フォーカスドライブラリーの新しい利用法を試みた。ライブラリー化合物に紫外線またはマイクロ波を照射した後に改めてスクリーニング実験を行い、紫外線・マイクロ波照射前よりもSREBP活性化阻害効果が増強されるものを探索した。その結果、複数のライブラリー化合物が紫外線照射によってその阻害活性が向上した。現在、その構造決定を試みている。マイクロ波を照射した場合には、照射前後で活性に変化は見られなかった。 また、これまでの研究成果より、ファイトスタチン様に作用するステロール以外の内因性物質が存在する可能性を考えた。そこでSREBP活性化に関わる新規内因性物質の探索を目的に、新たに280種の脂質誘導体ライブラリーを構築し、スクリーニングした。その結果、SREBPの活性化を阻害する複数の脂質誘導体を得た。その中には、SREBPとの関係が報告されていない内因性物質が含まれていた。これら見出した内因性脂質誘導体はSREBP活性化を制御する新たな内因性物質の可能性がある。現在、その詳細な機能解析を行っている。
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