【目的】脂肪酸は細胞死誘導能を持つと共に,プロテインキナーゼ(PKC)を活性化する.本研究では,脂肪酸で活性化され,細胞小器官に移行するPKCに注目し,脂肪酸を利用して,細胞小器官でのPKCの活性化機構と細胞死制御機構の解明,及びPKCが関与する疾患の病態解明や治療法を提示することを目指す. 【方法】細胞死への関与が報告されている代表的なPKCサブタイプ(alpha,gamma,delta,epsilon,zeta)を選択し,遺伝子クローニングと,Venus(蛍光タンパク質)融合タンパク質の発現ベクターを作製した.培養細胞を用いた過剰発現系を構築し,脂肪酸処理後の種々PKCサブタイプの局在変化や,脂肪酸自体の局在を,共焦点レーザー顕微鏡やラマン顕微鏡を用いて観察した. 【最終年度の成果】脂肪酸を細胞に処理すると,核近傍で観察される脂肪油滴(lipid droplet)が出現することを,lipid dropletを染色するNile Redを用いて確認した.ラマン顕微鏡を用いた解析から,細胞死を誘導する脂肪酸であるGLAやドコサヘキサエン酸(DHA)は,lipid dropletに局在する様子が観察された. 【期間全体の成果】検討したPKCサブタイプの内,PKCdeltaはGLAを処理すると,lipid dropletに局在するように見えたが,lipid dropletを染色するNile Redとの共局在は観察されなかった.またPKCepsilonは細胞質全体に広がる様子が観察され,PKCzetaは核近傍に集積する様子が観察された. 【今後の展開に関する計画】細胞内局在の判定のため各種オルガネラマーカーとの共染色と,脂肪酸処理後に見られるlipid dropletとの関係について調べる必要がある.
|