研究課題/領域番号 |
24710270
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉田 康子 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50582657)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 異型花柱性 / 多様性保全 / モニタリング |
研究概要 |
当該年度では、サクラソウの異型花柱性を制御する遺伝子領域(S-locus)を探索するためmRNA解析を企業に委託する予定でいたが、雌蕊や雄蕊のRNAはこれまで使っていた既存のRNA抽出キット(キアゲン社)では効率よくRNA抽出することができないことが判明したため、他大学の研究者の指導を仰ぎながらRNA抽出法の改良を行った。 サクラソウの自家不和合性は異型花柱性の遺伝子領域にあるとされる。自家不和合性を示す他種では、基本的には他殖であるものの自家不和合性の程度(自殖をする割合)が個体によって異なることが知られている。サクラソウもS-locus以外にもこれらを決定する遺伝子座がある可能性を考え、QTL家系192ジェネットを用いて、開花3日後の花にそれぞれ人工交配で自家受粉、またコントロールとして一部他家受粉を行った。これらの種子数を用いてQTL解析を行う予定でいるが、当該年度は種子数を数えている。 QTL家系は親の持つ遺伝子座の範囲内での変異のため、野生のサクラソウが一般的にどの程度自殖をするのかどうか、自家不和合性の変異を把握するため、北海道、埼玉、長野の3地域6集団由来の個体を用いて手交配による自家受粉も行い、それらの自殖率を調べた。これらも同様に種子数を数えている。 サクラソウは主に長花柱花と短花柱花が存在するが、ごく稀にS-locus内の遺伝子の組換えによって等花柱花が作られる。等花柱花はS-locusの構造を知る上で非常に重要な情報となりうる。当該年度では、等花柱花と思われる個体を花粉親として長花柱花と交配させF1種子を得た。F1の花型の分離を評価するため、F1個体を育成を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでサクラソウの葉では問題なく行えていたRNA抽出キットが、雌蕊や雄蕊のRNA抽出には有効でなかったため、RNA抽出法の改良する必要が生じてしまった。そのため当該年度で行うmRNA解析委託が行えなかったことから、予定していた実験がやや遅れている。 加えて、9月に筑波大学から神戸大学へ移動したことから、サクラソウの個体の移動や研究室・実験場所の立ち上げなどによって、当初予定していた研究が行えていないことも大きな理由のひとつである。 しかし抽出に時間がかかってしまったことから、当初は予定していなかった交配実験を行った結果、これまで見つかっていなかった等花柱花や自殖率の高い個体を見つけることができ、これらは今後の異型花柱性を制御する遺伝子領域の解析に非常に役立つものと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
当該年度に見つかったS-locus内の組換え個体であるとされる等花柱花や等花柱花を花粉親として作成されたF1個体は、今後の解析に非常に重要な材料となる可能性がある。当初はゲノム解析を中心に行う予定でいたが、これらは季節を問わず行える実験であるため、年間通じて比較的時間の融通がきく。そこで次年度ではゲノム解析だけではなく、春のサクラソウの開花シーズンは圃場実験を中心に行い、人工授粉の実験や作成したF1個体の花型や花器形態の測定を行う。さらに異型花柱性の解析に有効な材料を探すため、手交配による自殖や自然条件下で自殖をする等花柱花の探索も引き続き行う。開花シーズンが終了後、実験室でゲノム解析を行う。 現在はゲノム解析などの外部委託費用が安価になり、加えて解析技術の開発が日々進歩していることから、申請時に計画した解析方法(技術)にこだわらず、異型花柱性の関連遺伝子の探索がより効率的に精度よく行えるような解析方法も検討していく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当該年度で予定したいたRNA解析の外部委託費を次年度以降に繰り越し、効率のよいRNA抽出法が確立でき、現在異型花柱性の遺伝子領域の推定に最も適した解析方法を取捨選択した上でゲノム解析を外部に委託する予定である。外注費用以外には、サクラソウのサンプリングや学会発表のための旅費、および実験に使う試薬やプライマーの発注など、当初予定していた金額を使う予定である。
|