研究課題/領域番号 |
24710270
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉田 康子 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50582657)
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キーワード | 異型花柱性 / 自家不和合 / サクラソウ / 花器形態 |
研究概要 |
異型花柱性は自家受粉を防ぎ、効率的に他殖を促すことで、集団内の遺伝的多様性を維持していくための重要なメカニズムであるが、サクラソウには自殖をするジェネットが稀に存在する。自殖を行うジェネットには大きく分けて、①異型花柱性を支配するS-locus内で組み換えが生じていると考えられる等花柱花(質的な自家不和合性)と②一般的には自殖は行えないとされているが、自家不和合性の程度に差があるため自殖が可能な長花柱花および短花柱花(量的な自家不和合性)が考えられる。S-locusの分子メカニズムを明らかにするためには、自殖を行う等花柱花および短花柱花、長花柱花が重要な研究対象となる。 昨年度は、開花後3日後の小花に自家受粉と他家受粉を行い、それぞれの種子数を調査したが、アブラナ科などの植物では開花からの時間が経過するほど自殖が起こりやすいとの報告があるため、当該年度ではQTL家系と野生個体を対象に、各ジェネットのすべての小花の開花日を記録し、人工授粉(自家受粉および他家受粉)を行った。そして回収した種子数を調査し、第一花開花からの時間の経過と自家不和合性との関連を調べた。 来年度にS-locusの発現領域を探索を目的としたRNA-seq解析を行うため、長花柱花と短花柱花の柱頭からRNA抽出を行なった。また既存の連鎖地図に座上したS-locus周辺をより詳細にするためにRAD-seq解析を行う予定であり、そのためのDNA抽出を行った。 また、異型花柱性に関連する花器形態には多様な変異が存在するため、サクラソウが保有うする花器形態の遺伝的多様性を評価するため、宮崎県および広島県に自生する野生サクラソウのサンプリングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に筑波大学から神戸大学へ所属先が変わり、当初予定していた実験計画が大幅に遅れていたが、次年度にRNA-seq解析などの外部受託解析を行う予定であり、昨年度の遅れを大きく挽回できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は回収した種子数をQTL解析を行うなど、自殖と他殖によってできた種子を用いた解析をより詳細に行っていく。また、RNA-seq解析とRAD-seq解析を外部受託を行い、連鎖地図の充実を図り、S-locus周辺の塩基配列の情報を増やしていくことで、より正確にサクラソウの花型を識別できるマーカーの作出を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では初年度に外部受託で行う予定していたRNA-seq解析であるが、サクラソウ柱頭部分のRNA抽出の確立ができていなかったため抽出に時間がかかってしまったこと、そして所属先の移動があったことにより、予定通りに研究が進まず、外部受託に使う金額を次年度に繰越しているため。しかし外部受託の解析の目途がたっており、次年度に使用予定である。 当初予定していたRNA-seq解析に使用する。さらに連鎖地図の充実を行うため、RAD-seq解析にも使用予定でいる。
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