研究概要 |
本研究は、トリュフのように、地下に子実体を形成する分類群(以下、地下生菌)を対象に、日本における種多様性と進化系統を明らかにし、それらの遺伝資源を確保することを目的とした。 担子菌類の3科4属(Rhizopogon, Entoloma, Alpova, Melanogaster)の地下生菌の子実体からDNAを抽出し、菌類の種の判別に有効な遺伝子領域であるリボソームDNAのITS領域をシーケンスし、まず「仮想種」を決定した。その後、それら「仮想種」の子実体の菌糸や胞子の形態を観察して、種を特定した。上記4属のうち、Entoloma 属については論文にまとめ、2種を新種として報告した。最終年度は、Alpova属、Melanogaser属の解析をおこない、あわせて8種を特定し、系統解析をおこなったところ、それらはすべてが固有種で、Alpova属は日本のハンノキ属に特異性が高いことを明らかにした。これらの成果は日本菌学会第57回において発表し、現在、投稿準備中である。一方、食用菌として有名なショウロ属(松露:Rhizopogon spp.)は、全国から収集した120個の子実体を解析し、8種程度が存在することを明らかにした。これら日本種の多くは、海外産種とは異なる固有の系統群を形成したことから、課題申請時に仮説として挙げた「日本種には特有な系統群が存在する」ことを証明する結果となった。これらの種のいくつかは菌株としても保管している。以上の解析結果から、日本の地下生菌の多様性や進化特性について分かったことについて、一般向け雑誌に紹介した。
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