研究課題
アマゾン地域において絶滅が危惧されている水生ほ乳類アマゾンマナティーを対象に,保護個体の野外放流後の行動を評価することを目指している.餌を食べる音から摂餌行動を検出する手法を用いて,摂餌量の推定を行なうための実験を実施した.国立アマゾン研究所で保護,飼育されている個体を対象に,摂餌した植物の重さと咀嚼回数の関係を調べている.これまでに計8頭よりデータを得ており,より正確な推定を行なうために個体数を増やして実験を継続中である.本研究では,マナティーの咀嚼間のインターバルが餌植物種によって異なる傾向が示されており,対象個体が何を食べていたのかに加えて,どのくらい食べていたのかを把握することができる.マナティーの野外放流場所を決定するために現地調査を行い,ソリモエス川の支流,プルス川を選定した.放流は雨期である1月を予定している.現在までに,半野生の環境で計8頭を飼育して川へ慣れさせ,野外放流に向け準備している.プルス川は複数の村が点在し,一部が保護区として設定されている.以前はマナティーを食用に捕獲していたことから,熟練の漁業者たちの協力を得て野生個体が多く滞在していた場所や目撃場所などをヒアリングして放流場所を決定した.さらに,ここで野生個体の生息地利用状況を調べるため,音響機器を用いた摂餌音や鳴音の収録を行なっている.現在までに,アマゾンの雨期から乾期にかけて定期的に収録を実施しており,現在は乾期から雨期に向けて引き続き収録を継続している.これまでに得られたデータは自動抽出プログラムを用いて解析し,野生個体を特徴づける音を確認中である.マナティーにおいては,親子間での鳴き交わしが多く報告されているが,本研究ではストレス状態においても鳴音頻度が著しく増加することが分かった.鳴音頻度を指標に,放流個体のストレス度合いを把握し,一番良い状態での放流を行なうことを目指す.
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Journal of the Marine Biological Association of the United Kingdom
巻: first view article ページ: 1-8
10.1017/S0025315413001343
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