小笠原諸島の固有生態系の保全・復元を実施する上での外来生物の影響の評価とその緩和手法の確立のためには、生態系内の物質の収支や循環への影響を明らかにする必要がある。本研究では、小笠原諸島に侵入した侵略的外来木本種トクサバモクマオウの駆除が、生態系内の水の循環に及ぼす影響を評価し、本種を含む生態系の管理のための科学的情報を提供することである。 調査は、小笠原諸島西島のトクサバモクマオウが優占する森林内で実施した。西島では、広範囲においてトクサバモクマオウが優占する森林が分布しており、トクサバモクマオウの駆除後の植生変化のモニタリングを兼ねて2010年より段階的にトクサバモクマオウの駆除が実施されている。 平成25年度には、昨年度から実施している測定を継続した。トクサバモクマオウの駆除が有無や駆除からの経過時間が空間的・時間的に異なる場所で土壌含水量を比較した。その結果、トクサバモクマオウの駆除区における高い土壌含水量は、駆除からの時間の経過とともに若干減少した。これは、駆除後の下層植生の回復などと関係している可能性がある。 また、昨年度に続き、一部の駆除区と対照区において土壌含水量の時間的に連続的な測定を実施した。その結果、駆除区では、降雨の後の乾燥期における土壌含水量の減少の程度が、駆除区のほうが小さかった。これは、駆除に伴う蒸散量の消失と関係している可能性が示唆される。一方で、降雨時の土壌含水量の増加の程度は、駆除処理の有無だけでなく、降雨の絶対量にも依存して変化した。
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