研究課題/領域番号 |
24710276
|
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
亀山 慶晃 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (10447047)
|
キーワード | 有用樹木 / 遺伝的攪乱 / クスノキ / SSRマーカー |
研究概要 |
本研究では、有用樹木の利用が野外自然集団に及ぼす影響を分子生態学的視点から議論するために、クスノキを対象とした調査・解析を進めている。クスノキは日本、台湾、中国南部を中心に広く分布し、古来から利用されている有用樹木であり、野外自然集団だけでなく、成立年代が明確な植栽集団や、樹齢数百年以上と推定される数多くの巨樹・巨木が存在する。即ち、集団の遺伝構造に基づいた地域性の定義や、遺伝的攪乱が生じる時空間プロセスを解明する上で最適な材料である。1年目に当たる昨年度は、分布域の中心と考えられる中国南部、日本との歴史的繋がりが強い台湾、様々な地域集団が存在する日本、の計3カ国を対象に調査をおこない、GPSによる位置の記録、樹高及び幹周の測定、遺伝分析用の試料(葉)の採取を実施した。2年目となる本年度は、日本各地の巨樹・巨木及び地域集団を対象にサンプリングを進めるとともに、1年目に採取した試料を対象にマイクロサテライト遺伝分析をおこなった。さらに、日本におけるクスノキの自然更新の可否について検証するため、落葉広葉樹林の林床に環境条件が異なる複数の調査区を設置した。各調査区にはクスノキの種子を人為的に播種し、林床の光環境、土壌含水率、地表面温度と共に継続調査をおこなっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は継続的な試料採取と遺伝分析に加えて、野外における生態的な播種実験を開始した。これは、東京農業大学地域環境科学部と川崎市との連携協定に基づき、特別緑地保全地区における学術調査が可能になったためである。関東地方の落葉広葉樹林において大規模な野外実験ができるケースは限られており、大きな進展であった。また、昨年度、台湾、中国、日本で採取した数百サンプルの試料については、既にDNA抽出とマイクロサテライト遺伝分析を完了した。本年度末に予定していた中国での調査は、日中関係の悪化という政治的理由によって中止を余儀なくされたが、当該期間中に日本での調査とサンプリングを実施することができた。生態調査、遺伝調査ともに、おおむね順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度サンプリングをおこない、既にマイクロサテライト遺伝分析を完了した試料については、集団遺伝学的なデータ解析を実施する。また、本年度日本各地で採取した試料については、DNA抽出とマイクロサテライト遺伝分析、データ解析などを順次進めていく。さらに、試料の採取地点をさらに追加し、国内外のクスノキの遺伝的特性を詳細に明らかにする。また、新たに設置した野外調査区において、環境条件(林床の光環境、土壌含水率、地表面温度)を調査すると共に、クスノキの種子の発芽、生長、枯死といった生活史特性に関する追跡調査を実施する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
残金を無理に使用するよりも、次年度に繰り越す方が合理的と判断したため。 実験消耗品の購入に充てる。
|