研究課題/領域番号 |
24710282
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
津田 浩司 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (60581022)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インドネシア / 華人 / 「伝統」宗教 / 中国廟(寺廟) |
研究実績の概要 |
平成26年度は、交付申請書の「研究実施計画」に記載した(イ)の量的調査の一環として、夏季に南スマトラ州都パレンバン市、および西スマトラ州都パダン市とその周辺の華人コミュニティの宗教生活を実地調査した。前者においては、ジャワとほぼ同様の構図での宗教団体間(特に三教と孔教)のせめぎ合いが観察されたと共に、歴史的に小規模な宗廟が無数に展開してきたことを確認した。一方後者の地では、19世紀後半に結成された秘密結社に起源を持つ華人コミュニティ組織(現在は葬祭互助組織として機能)が今なお同地の人々の社会生活上重要な地位を占めており、それがゆえ他地域で影響力を持っている宗教団体や華人系の社会組織が十全に展開し得ていない様を観察した。なおパダン市においては、同地の華人史を研究する地元国立大学教員と交流を持ち、臨時に設定されたセミナーにおいて意見交換を行った。 夏季の調査時には、華人の宗教生活の変化を活字資料から明らかにすべく、あわせてスラバヤの私立図書館とジャカルタの蔵書家宅を訪問した。1950年代から60年代にかけて華人読者層を抱えていたインドネシア語週刊誌(Star Weekly誌、Liberty誌、Pantja Warna誌)を中心に精査し、関連記事のコピーを入手した。 これまでに得た知見の一部は、所沢市の公民館講座「世界の文化を学ぶ―東南アジアの文化と歴史そして今」と題した連続講演会の中で発表しており、また英語論文を国際研究プロジェクトのWorking Paperシリーズに投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」においては、(イ)として、現代インドネシアにおける「華人の伝統宗教」の様態について、すでにジャワ島で得られた知見を対象化すべく、「外島」でのサーヴェイを可能な限り網羅的に行うことを掲げていた。平成26年度は、スマトラ島の南部と西部の2大都市を調査し、ジャワとは異なる歴史性に基いたコミュニティ内での宗教のあり方の固有性について、確認することができた。 他方で、これと同時並行的に行うとしていた定点的でインテンシヴな調査(ハ)は、時間の制約から実施することができなかったので、最終年度の課題としたい。 (ロ)の各宗教団体に関する動向調査については、これまでも散発的に実施しているが、その歴史的展開については、華人を読者層とする雑誌や当該団体の機関誌のバックナンバー等からも、相当跡付け可能であるとの感触を得られたため、この作業を継続していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は(ハ)の質的調査を重視する。夏季に2週間ほど、中ジャワ州ルンバン県の華人コミュニティに滞在し、同地の寺廟の管理運営体制の変化や、周辺地域の寺廟との交流の実態などについて跡付ける予定である。 あわせて、1週間ほどの期間を取って、(イ)の量的調査を継続する計画である。調査地点は確定していないが、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、鉱山開発のために大量の客家移民を受け入れたバンカ島・ビリトゥン島の調査を視野に、現地コーディネーターと調整中である。 なお、今年度は本科研およびそれと関連するインドネシア華人の社会生活に関する研究成果報告を、日本文化人類学会および東南アジア学会で発表する予定でいる。
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