26年度第1四半期は、The 14th Congress of the International Society of Ethnobiologyにおいて成果発表を行った、またTropical Agriculture and Developmentに原著論文が掲載された。第2四半期は2014年次日本島嶼学会およびThe 6th Asia-Pacific Forum on Ethnobotanyにおいて成果発表を行った。第3四半期はインドネシアのスラウェシ島北部、第4四半期はスマトラ島北部においてトウガラシ属の遺伝資源に関する追加調査をおこなった。3年間の調査結果から以下のことが明らかとなった。まずC. pubescensについては、①約100年前すでにインドネシアへ伝播していた、②現在は少なくともジャワ島・スマトラ島・スラウェシ島の高地に分布する、③特に西ジャワのバンドン周辺や中央ジャワのディエン高原における栽培が非常に盛んである、④オランダ統治時代にキナノキ属植物や他の亜熱帯性植物とともにC. pubescensは西ジャワへ新規作物として導入された、そしてまずバンドン近郊で栽培・利用が盛んになり、その後インドネシアの他の高地部へ導入されたと考えられる。次にC. chinenseについては、①ジャワ島・スマトラ島・スラウェシ島と幅広く分布している、②標本調査および文献調査から第二次世界大戦より前にインドネシアへ伝播していた可能性が高い、③南アジアへの伝播経路とは別の経路でインドネシアに伝播した可能性が高い、④インドネシアには果形の異なる系統が複数存在することを考慮すると、C. chinenseは異なる場所から異なる時期に幾度にもわたってインドネシアへ伝播したと思われる。
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