本研究は、第一に世界の不安定化要因となっているにもかかわらず、あまり検討されてこなかった未承認国家の諸問題を浮き彫りにすること、第二に未承認国家の事例研究により、ポスト・ウエストファリア時代の国家像を模索し、 現状に見合う新たな国際政治の理論を構築することを目的としてきたが、研究期間中にかなりの成果を出すことができた。 最も顕著な実績は、『未承認国家と覇権なき世界』(NHK出版)の出版であり、それにより、本研究の目的をかなりの部分まで達成しただけでなく、メディアや学界からも大きな反響を得て、社会的にも大きな効果を生み出したと言える。また、英語による国際学会やシンポジウムでの発表、複数の英語論文の発表などで、国際的にも注目を浴びることができた。加えて、海外の複数の大学や研究所との共同研究も行うことができ、今後の研究の発展の上でも重要な基盤を築くことができた。 他方、研究期間中に、当初全く想定していなかった「ウクライナ危機」が発生し、その中でも、ロシアによるクリミア併合と東部ウクライナの独立宣言および内戦は、本研究の重要な検討事例となり、それに関する研究成果も多数発表した。 加えて、未承認国家問題の解決が難しい一方、それが誕生する契機となる「凍結された紛争」の研究の必要性を痛感した結果、最終年度には、科学研究費・基盤C(特設分野研究)において「凍結された紛争:その予防と積極的平和の模索」という課題が、採択され、凍結された紛争とも絡めて研究を深めることができた。 本研究においては、国際的な共同研究を重視し、今後も発展させたいと考えていたところ、最終年度に本研究のテーマで、科学研究費・国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)に採択していただけたことから、来年度以降もヘルシンキ大学・アレキサンテリ研究所を拠点に、国際的かつ多角的に多くの研究者と協力して、本研究をより深めていきたい。
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