研究課題/領域番号 |
24710294
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
小原 江里香 津田塾大学, 国際関係研究所, 研究員 (30400203)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 中国 / 重慶市 |
研究概要 |
24年度は、予定していた調査の実施を試みたが、現地との連絡がスムーズに運ばなかったため、現地との調整と並行して以下の3点に注力した。まず第1に、文献研究である。「重慶モデル」に関連する情報に関してはネット上で公開されているだけでなく、関連書籍も膨大に出版されている。こうした情報や先行研究の整理を行った。 第2に、本研究と似た研究テーマもとで収集された貴州省農家の調査データを利用した就業分析である。分析の結果、調査地では出稼ぎ労働は依然として主要な現金収入の機会であるものの、一方でUターンをする者も年々増加していること、そして失業してUターンせざる得ないとう消極的な理由よりも、Uターンして起業するため、といった積極的な姿勢が目立つことを指摘した。事実調査地で自営業を営む者の賃金水準は概して出稼ぎ労働者のそれよりも高く、「回郷創業」の機運が高まっている様子がみてとれた。ただしその職業のほとんどがトラック運転手等の運輸業従事者や小規模商店の経営者であることから、それは一時的な投資ブームを受けた結果であり、必ずしも地域の産業発展を牽引するような存在であるとはいえない点を指摘した。 第3に、2010年に中国で行われた人口センサスの結果が24年度に公開されており、これを利用して全国レベルでの人口移動の実態の解明を試みた。その結果、2000年代の人口移動の特徴として、上海と北京への一極集中が進んでいること、青壮年層の移動率の上昇、低・中学歴の移動率の上昇、短期滞在型が依然として大半であること、非国有部門従業員比率が高い地域では移動率が高いといった1990年代には確認されなかった特徴が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究1年目となる24年度は、本調査のための予備調査等を予定していたが、カウンターパートとの連絡、関係強化がスムーズに運ばず実現しなかった。その理由として、大局における日中関係の悪化が考えられる。現地調査は本研究において不可欠であり、研究計画は全体的に遅れ気味にならざるをえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査についてであるが、当初は調査票調査を予定していた。しかし昨年度あたりから、外国人研究者の調査に対する風当りが急速に強まり、調査票調査は極めて困難な状況に変化しつつあるように思われる。そこで、インタビュー調査を複数回にわたって実施することによって、調査票調査の代替としたい。そのため目下調整中である。 調査方法の変更は、本研究に大きな支障はきたさないものと考えている。本研究は戸籍や土地や住宅など幅広いテーマを扱い、包括的な研究という性格を有している。昨今の状況を踏まえると、インタビュー調査に理解を示してくれた人を調査対象者とし、一人あたりの調査時間をかけて情報を収集する方法の方が確実な情報が得られ、また全体像を把握することができるものと考えている。したがって研究方法を変更しても十分に研究目的は達成可能である。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度において繰り越しとなった額は、大方実現しなかった中国での現地調査の費用(出張旅費、調査協力に対する謝金等)であり、これを25年度において使用して現地調査を実施する。繰り越し額は調査費用の2回分にあたる。さらに可能であれば2回にとどまらず追加して調査を実施する。 また各省の人口センサス資料が出版されており、その購入費にあてる。また国内での学会報告を予定しており、その旅費等としても使用する。また中国語の学術書をオンラインで閲覧するためのカード(CNKIカード)を購入する予定である。加えて統計ソフトSPSSのバージョンアップの費用としても使用する。
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